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中村俊輔「そんな人います?」 気付かされた“矛盾”…J1初挑戦の監督が目指す「加点方式の指導者」【インタビュー】

FOOTBALL ZONE / 2025年2月7日 7時10分

■秋葉監督の原点は中村俊輔氏の言葉「なんで指導者は全部を求めるんですかね?」

 現役時代に守備的MFとして活躍をした清水エスパルスの秋葉忠宏監督だが、指導者に転身してからは一貫して攻撃的なサッカーを標榜している。起用する選手を選考する際も、選手たちのウィークポイントを見て「これができないから」と起用する選手を決めるのではなく、「これができるから」とストロングポイントを見て、ピッチに立つ「加点式」の選手起用をしている。そうしたスタイルを築いた背景には、日本サッカー史に名を残すレフティーの影響があった。(取材・文=河合 拓/全8回の8回目)

   ◇   ◇   ◇

 清水を率いてJ2優勝、J1昇格を実現した秋葉監督は、1994年に市立船橋高校からジェフユナイテッド市原(現ジェフユナイテッド千葉)に加入してプロのキャリアをスタートさせた。当時、市原には、元ドイツ代表FWピエール・リトバルスキーや元西ドイツ代表FWフランク・オルデネビッツ、元ユーゴスラビア代表MFネナド・マスロバルら、世界にも名を轟かせる選手たちがいた。

「誰の影響なのかは分かりませんが、現役の時に山口素弘さんと一緒にプレーできたこととかは大きいかもしれません。あとは、最初の頃はリトバルスキーだとか、マスロバルとかには『おまえは難しいことしなくていいから、俺にボールを持ってこい』『ボールを取るのがおまえの仕事で、攻めるのがオレの仕事だ』と言われていました。当時の監督たちからも『いかに前を気持ちよくプレーさせるかがボランチだ』『あいつらが守備しないことを分かっているなら、そのうえで守る術をおまえがうまく考えろ。あいつらがいなくなって、それでも点を取れるのか?』と言われていたので」

 秋葉監督は約30年前のことを振り返る。そうした選手たちがいたことで、常にボランチとして、前線の選手たちをどれだけ輝かせるかを考えていた。現役引退後にはS級指導者ライセンスを取得するため、海外研修でスペインに行く。そこで当時スペイン1部エスパニョールに在籍していた元日本代表MF中村俊輔氏(現横浜FCコーチ)と交わした会話が、今も忘れられない。

「その時に俊輔に『秋葉さん、なんで指導者は全部を求めるんですかね? 僕にもできることと、できないことがあります』って言われたんです。その時に彼が例に出したのが、平山相太と岡崎慎司の例でした。『代表の監督でも、岡ちゃんに『ポストプレーしろ』、平山に『裏を取れ』って言いますけど、違いますよね? 裏を取るのが岡ちゃんの仕事で、ポストプレーをするのが、平山の仕事ですよね? なんで全部を求めるのか。そういうのを組み合わせたり、良さを引き出してあげるのが、当たり前じゃないですか? そのほうが選手としても嬉しいですよね。苦手なことをやらせるなら、それをできる選手を選んだほうが良くないですか? 全部できる人間なんていないし、それはもうロボットじゃないですか』っていう話をされたんです」

 元日本代表FW平山相太は、FC東京などで活躍した身体の強い190センチの長身ストライカーであり、清水OBでもある元日本代表FW岡崎慎司氏は鋭い動き出しとゴールへの執念を武器とした選手だった。

■選手の「減点ばかりしていたら、キリがない」

 中村俊輔氏に「全部ができる選手なんて、いなくないですか? 足も速くて、うまくて、強くて、高さがあって、守備もできて、走れて、泥臭くてなんて。そんな人います?」と聞かれた秋葉氏は、言葉に詰まるとともに、「指導者になると全部を求めがちだけど、加点方式の指導者になりたいな」という思いを固めていった。

「減点ばかりしていたら、キリがないですもんね。『おまえはあれが悪い』『これが悪い』って、言うのは簡単ですけど、そんなことばかり言われたら、自分が選手だったら嫌ですし、『そんなのオレでも分かってるわ』と思いますからね。それよりは『おまえはこれがストロングで、これが良さだと思っているから、こういうところをもっと伸ばせば面白いんじゃない』って伝えたほうが、選手もやる気を出して伸びていくと思うし、進んでトレーニングをすると思うんです。

 それがある程度できてきたら、今度はウィークポイントに目を向けて、弱点を標準、アベレージにしていこうとしたほうが、選手にもスッと入っていく。ネガティブなところから入っていくと、選手は耳を塞いじゃって聞かなくなりますから。まずは自分の持っている良さを出させることが大事だと思っています」

 そんな秋葉監督だが、来シーズンは初めて監督としてJ1の舞台に臨む。J1での経験不足が危惧されるが、秋葉監督は「フットボールに変わりはないでしょ」と一蹴する。

「よく心配されますけど、全く心配していません。だって30何年もずっとJリーグを見てきていますし、僕はプロの世界でしかメシを食ったことがないですから。むしろ何を心配されているのか、全然分かりません。J1に行ったら、みんなとんでもないフットボールをしているのかというと、そうではありません。いかに良い選手を適材適所に抱えられるか。自分たちのやりたいフットボールにあった選手、見合った選手をちゃんと取って、編成で揃えられるかが重要だと思います」

 今季のJ1は、昇格組のFC町田ゼルビアが3位、東京ヴェルディが6位となり、リーグ戦を大いに盛り上げ、両クラブの黒田剛監督と城福浩監督も話題となった。49歳の秋葉監督は、初挑戦となる来季のJ1にどのような旋風を起こしてくれるだろうか。

[プロフィール]
秋葉忠宏(あきば・ただひろ)/1975年10月13日生まれ、千葉県出身。現役時代は千葉―福岡―C大阪―新潟―徳島―草津―相模原でプレー。相模原では選手兼監督として活躍。13年より群馬の監督、その後は日本代表のアンダー世代でコーチも務め、20年より水戸の指揮を執る。23年から清水のヘッドコーチとなり、同年4月から監督に就任した。熱い言葉で選手、サポーターを鼓舞し、24年5月にはJ2通算100勝を達成。同年、清水のJ2優勝&25年シーズンのJ1昇格に導いた。(河合 拓 / Taku Kawai)

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