無名校なのに「なぜ逸材が」…中3で争奪戦勃発、強豪校からオファーも「迷いなかった」
FOOTBALL ZONE / 2025年2月9日 7時30分
■豊川高1年生アタッカー・大下蒼生の魅力と内に秘める思い
全国高校サッカー選手権大会が開催される直前、この舞台を夢見ている1人の逸材のプレーに心を奪われた。
愛知県にある私立豊川高校の1年生アタッカー・大下蒼生は、ボールを持った時の加速力に加え、両足の先足なボールタッチを駆使したドリブルで次々と相手をかわしていく。
ここまでだと普通のドリブラーに見えるが、彼の能力の高さを感じたのがドリブルの際の情報収集力だ。ボールを運びながらも相手や味方、スペースを頭の中に入れて、その局面で最良の選択を下す。この能力はボールを受ける前にも発揮され、ポジショニングと身体の向きをこまめに変えながら、パスが来た瞬間にはファーストタッチで一気に相手の前に出たり、スペースに飛び込んだりしていく。プレーを細かく見れば見るほど、面白くて前のめりでプレーを見てしまう選手だった。
豊川は一度も全国大会に出たことがない。それどころか昨年のインターハイ予選でベスト4に進出したのが過去最高成績で、それまでは県予選早々に負けることが多かった。所属するリーグも愛知県リーグ2部。なぜここにここまでの逸材がいるのか。それは指導者の存在に理由があった。
「僕の地元の豊川で、かつ全国を知り尽くした長谷川大監督がいて、熱心に僕のことを誘ってくれました。実際に練習に参加して本気で全国、日本一を狙っていると感じましたし、長谷川監督は細かいところまで見て、理論的にアプローチをしてくれる。ここなら成長できると思って決めました」
チームを指揮する長谷川監督はかつて選手権最多出場回数を誇る名門・秋田商業を長年指揮し、神奈川大学では伊東純也らを指導。2019年途中に山梨学院高の監督に就任すると、2年目には第100回全国高校サッカー選手権大会で山梨学院高校を2度目の選手権制覇に導いた。プロを指導できるS級ライセンスも取得している名将だ。
豊川で講演会をやったことをきっかけに、学校側からの熱心なオファーを受け、2023年に監督就任。ちょうどこの年、大下は中学3年生で日本代表の菅原由勢を輩出した県内の強豪クラブであるA.Sラランジャ豊川でプレー。名古屋グランパスU-18にチャレンジするも不合格となったが、彼の個性的なドリブルを評価され、複数の県外の強豪校からも誘いがあった。
しかし、彼は「山梨学院の優勝もテレビで見ていましたし、凄い人が豊川に来ているという印象でした。迷いはなかったです」と無名校の豊川に進学した。
■名将の指導で大きく成長、全国出場へ「今に見ていろよ」
1年経って大下のドリブルの質はさらに向上した。前述したとおり、ドリブルに入るまでの動きも長谷川監督から細かく指摘されたことで、よりその威力は高まった。今年度の国体にも豊川から唯一選出されて全国大会を経験するなど、実績を積み重ね始めている。
選手権予選では3回戦で中部大学春日丘に敗れてしまったが、1、2年生主体のチームは新チームに切り替わると、長谷川監督の伝手で多くの県外の強豪校との試合を重ね、着実に強化を継続している。
12月下旬に長谷川監督が発起人となって開催されたELSA CUP U-17 Next Challengeでは秋田商業、神戸弘陵、高川学園、岡山学芸館などと対戦。ベストメンバー同士の対決となった神戸弘陵戦で大下はドリブルからのチャンスメイクを惜しげもなく発揮し、1ゴール1アシストを記録。3-3の大熱戦の主役となった。
「選手権出場は本気で狙っていたので、悔しい気持ちしかありませんが、『今に見ていろよ』という気持ちです。僕たちは本気で日本一を目指しているので、常に今に満足せず、サッカー面だけではなく、私生活や身なりをしっかりして成長していきたいと思っています」
長谷川監督、チームメイトはもちろん、ラランジャ豊川の偉大な先輩である菅原、そして全国レベルの力を持つ他部活の友人。今の彼には刺激を与えてくれる存在がたくさんいる。
「菅原さんはこれまで3回ほどラランジャのグラウンドに来てくれました。まずオーラが違いましたし、練習の強度の面で『プロを本当に目指しているのか? GKしか声を出していないぞ!』と鋭い指摘も受けて、一流の人の考え方などに刺激を受けました。普段でも全国で男女アベック優勝するくらい強豪の水泳部に友人がいて、練習に取り組む姿勢や立ち振る舞いを見て、僕も全国で活躍したいなと刺激をもらっています。本当に豊川に来て良かったと思っていますし、それをこれから自分たちの手でどんどん証明していきたいと思います」
大下には常に高い基準があるからこそ、その目は謙虚さを持ちながらもまっすぐ前を向いている。「愛知に豊川あり」「豊川の大下蒼生あり」。そう思わせられるように、彼は壮大なチャレンジに挑み続ける。(FOOTBALL ZONE編集部)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
選手権で不発、2年生にのしかかる「やっぱり頼りない」 伝統のユニ纏い…蘇る苦い記憶
FOOTBALL ZONE / 2025年2月9日 8時30分
-
どこよりも早いセンバツ予想! 日刊ゲンダイと専門家が占う優勝候補、ダークホース、大穴
日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月27日 9時26分
-
日本高校選抜候補唯一の2年生が1ゴール。逸材FW大石脩斗は鹿児島城西3年生の思いを誰よりも背負って1年間を過ごし、「自分がいればチームが勝つ」ストライカーへ
ゲキサカ / 2025年1月26日 23時51分
-
軽率ミスは「許されない」 2年生CB、憧れの名門校で目が覚めた…責任重大「プロにもなれない」
FOOTBALL ZONE / 2025年1月21日 7時10分
-
甲子園を観戦「ああいう風になれよと」 変わった目の色…刺激になった“野球部の姿”
FOOTBALL ZONE / 2025年1月12日 19時50分
ランキング
-
1プロ野球キャンプに潜む違和感「いや、逆!!」 大物登場で指摘発生「不思議だ」「CMよろしく」
THE ANSWER / 2025年2月8日 21時3分
-
2【カーリング】北海道銀行が決勝進出!仁平は涙「つらかった…」 26年五輪に望みつないだ
スポニチアネックス / 2025年2月8日 20時24分
-
3メッツ・千賀 ダルと合同トレで32歳誕生日祝いに喜び 「温かく迎えてもらいました」
スポニチアネックス / 2025年2月9日 2時2分
-
4日本は4戦全敗でカリビアンシリーズ惨敗 チーム編成に疑問も...「相手に失礼」「大会に呼ばれなくなる」
J-CASTニュース / 2025年2月8日 18時0分
-
5ジャンプ男子で同点Vの日大山形・布施、風つかむ技術磨き、97mの会心ジャンプ
読売新聞 / 2025年2月9日 8時6分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください