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久保建英の長短「時々やりすぎも…」 スペイン人記者2人が分析、ゴール起点は「その賜物」【現地発コラム】

FOOTBALL ZONE / 2025年2月10日 7時50分

■国王杯準々決勝のオサスナ戦、ソシエダの久保が先発出場で勝利に大きく貢献

 久保建英は国王杯準々決勝のオサスナ戦で、空中戦に競り勝ち先制点の起点となり、2季連続で準決勝進出の偉業を成し遂げたチームに貢献。この4日前にラ・リーガで敗れた相手に見事リベンジを果たした。

 オサスナの本拠地パンプローナとサン・セバスティアンは、かつて同じナバーラ王国に属していたという歴史的背景やバスク語を話すなどの共通点があるため、お互いを“兄弟クラブ”と認識しており、良好な関係が続いている。そのため、試合前からスタジアム周辺のバルでは両サポーターが談笑しながら酒を酌み交わすという微笑ましいシーンがいたるところで見られた。

 もちろんピッチ内は別の話だ。レアル・ソシエダにとっては昨季から3連敗中と苦手意識のある相手との一戦だったが、ホームサポーターを前にして、キックオフから激しくぶつかっていった。

 久保は4-3-3の右ウイングで公式戦2試合連続の先発出場し、週末のラ・リーガで厳しいマークを受けたDFフアン・クルスと再びマッチアップ。前回同様、簡単にはドリブル突破を許してもらえなかったが、連戦の疲れは感じられず、コンディションは良さそうだった。

 ソシエダは年明け後のわずか1か月間で9試合を戦っている。3〜4日ごとに1試合の過密日程が、選手のフィジカルコンディションに影響を及ぼさないわけがない。久保はこの状況にあっても「毎試合出られるなら出たい」とUEFAヨーロッパリーグ(EL)のPAOK戦後に漏らしていた。しかし、イマノル・アルグアシル監督はチーム全体に疲労が蓄積していると判断し、過去の教訓を生かして、今季は例年よりも頻繁にローテーションを実施。久保は今年に入り、3試合に1度の割合でベンチスタートになっているが、そのおかげで良好な状態を保てているとの見方もできる。

 久保は前線で積極的に動き回ってチームメイトとの連携を図り、ボールを保持してスルーパスを狙っていった。そして前半21分に試合が動く。久保が空中戦でフアン・クルスにヘディングで競り勝ったプレーが起点となり、アンデル・バレネチェアの先制点が生まれた。さらにブライス・メンデスが追加点を奪い、オサスナDFアレハンドロ・カテナが退場したことで、ソシエダは圧倒的有利な状態でハーフタイムを迎える。後半はゲームをうまくコントロール。危なげなく2-0で勝利して、ホームでサポーターと一緒に準決勝進出の喜びを分かち合った。


久保建英について語った地元紙「ディアリオ・デ・ナナバーラ」のゴルカ・フィウサ記者(左)、国営テレビ局「TVE」のオスカル・アロンソ記者(右)【写真:高橋智行】

■スペイン各紙の評価は?「重要な役割」「ドリブルで違いを生み出しているが…」

 精度の高いCKを蹴ってドリブルシュートを放ち、高いキープ力で相手のファウルやイエローカードを誘発し、自陣に戻って守備をした久保だったが、スペイン各紙の評価は分かれる形となった。

 全国紙「マルカ」と「AS」は、ともに2点(最高3点)と高評価した一方、クラブの地元紙「ノティシアス・デ・ギプスコア」は、「ゴールは逃したが、ヘディングで先制点の重要な役割を果たした。決定的な存在となりドリブルで違いを生み出し続けているが、もっといいパフォーマンスができる選手のはずだ」と評し、5点(最高10点)と期待も込めてやや低い点数をつけた。

 もう1つの地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」紙は、「相手との1対1は上手くいかなかったが、アリツ・エルストンドをサポートしようと懸命に働いた。バレネチェアのゴールで終わったフアン・クルスとの空中戦に挑むほどの自信があり、常にプレーに関与し、相手を引きつけてスペースを作り出した。右足のシュートは残念だった」とし、3点(最高5点)と評価した。

 スペイン紙の評価は上記のようなものだったが、取材に来ていた記者2人に、試合を観た直後の現場から生の声を聞かせてもらった。まず、対戦相手の地元紙「ディアリオ・デ・ナナバーラ」でオサスナの番記者を務めるゴルカ・フィウサ氏はこの日の久保をどう見たのか。

「創造性に長けたプレーで試合の流れを変える選手だった。ビセンテ・モレノは週末のリーグ戦と同じくフアン・クルスを左サイドバックに置いて久保を止めようとしたが、今日は危険な存在だった。特に前半、オサスナは主に久保に苦しめられていた」と敵将のプランが上手くいかなかったことを指摘した。

 フアン・クルス相手にドリブルをほとんど成功できなかった理由については、「結果はともかく、今日のラ・レアルはそこまで輝いていたわけではない。加えてオサスナは10人になったことでうしろに引かざるを得なくなった。これにより久保はスペースがなくなってしまい、静的なプレーを強いられ、ドリブル突破がより難しくなったんだと思う」と分析している。

 フィウサ記者はまた、CKのキッカーを務めた久保が後半7分に、ナイフ・アゲルドがあと一歩でゴールという正確なキックを披露したことにも触れ、「シュートやパスの正確性を欠くことはあったが、セットプレーでは精度の高いキックを見せていた。あれは彼の長所の1つだよ」と称賛した。

 概ねポジティブに捉えているようだが、試合の中で存在感が薄れる時間があることを指摘。「パフォーマンスをもっと安定させる必要があると思う。彼は才能に恵まれた選手だからね。閃きはあるが、プレーがまだ不安定だ。自身の備える能力をコンスタントに発揮し続けられれば、さらに飛躍できると思う」と改善点を述べている。


国王杯準々決勝のオサスナ戦が行われたレアル・ソシエダの本拠地レアレ・アレーナ【写真:高橋智行】

■記者が指摘する改善点「タケはもっと冷静にならなければならない時がある」

 もう1人の識者である、スペインの国営テレビ局「TVE(テレビシオン・エスパニョーラ)」のオスカル・アロンソ記者は、まず久保の優れた点として“ボールを運ぶ能力”を挙げていた。

「今日はフアン・クルスをあらゆる面で上回り、とても良い試合をやっていた。タケは本当に縦に強く、推進力がある選手だ。ラ・レアルにとって非常に重要な意味を持つこの一戦で大いに貢献した。オサスナは先日のパンプローナでは徹底的に警戒して抑えていたが、今日は彼を上手く抑えられなかった」と右サイドで相手の脅威になっていたことを強調した。

 さらに、先制点につながるヘディングや自陣でプレスからボールを奪うなど、攻守にわたるデュエルで力強さを見せたことについて、「守備面を日に日に進歩させている。1点目のヘディングはその賜物だ。そのことはチームの成長にも大きく貢献している。また、彼がうしろでボールを奪うことで、チームはカウンターを仕掛けられるようになっていた。彼は今日、その能力があることも示していたよ」と、身体を張った献身的なプレーを高く評価した。

 一方で、久保が相手の密集しているゾーンにドリブルで突っ込んだ場面が気になっていた。「タケはもっと冷静にならなければならない時がある。時々とても衝動的になり、やりすぎてしまうこともあるからね。彼には多くの長所があるからこそ、その点をもっと改善できたら、さらに優れた選手になれるはずだ」と、冷静さがさらなる成長をもたらすと分析した。

 今年に入り、久保はすでに公式戦9試合に出場。すべての大会に勝ち残っていることは喜ばしいことだが休む暇はない。チームはこの後も週2試合を戦うタイトな日程が続くため、これまで同様にコンディションを整え、怪我することなく出場する試合全てに万全の状態で臨めることを願いたい。(高橋智行 / Tomoyuki Takahashi)

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