欧州サッカー映像が流れ…“ワクワク感”は希薄に J王者は主力温存、意味は「薄れた」【コラム】
FOOTBALL ZONE / 2025年2月10日 11時10分
■Jリーグの歴史を彩ってきたスーパーカップが歴史に幕
Jリーグのシーズン開幕を告げる「富士フイルムスーパーカップ」が32回の歴史に幕を閉じた。8日、国立競技場にて昨季J1で2位のサンフレッチェ広島がリーグ、天皇杯2冠のヴィッセル神戸を2-0で破って5回目の優勝。過去最多5万3343人の観客に見守られ、Jリーグの歴史を彩ってきた大会が32回でその役目を終えた。
「いよいよ始まるな」。毎年「スーパーカップ」が近づくと、サッカーファンはワクワク感に包まれた。長いオフが終わってようやく始まるリーグ戦。まだ欧州サッカーなど見られない時代、高校選手権後の「飢餓感」があるからこそ、この大会が待ち遠しかった。
メディアにとっても同じだ。オフの間の「移籍スクープ合戦」が落ち着き、晴れて迎える開幕。辛いことも多い「フロント取材」から本来の「ピッチ取材」に変わるタイミングが、この大会だった。
当時の大会名は「ゼロックススーパーカップ」。第1回は2シーズン目のJリーグ開幕前の94年だった。カズ、ラモス、武田ら攻撃陣にスターを揃え、Jリーグ初年度の王者となったヴェルディ川崎(現東京ヴェルディ)とゾーンプレスを武器に天皇杯を制した今はなき横浜フリューゲルス。タイプの違う両チームが、大会を盛り上げた。
振り返れば、点を取り合う好ゲームも多かった。95年大会ではベルマーレ平塚(現湘南ベルマーレ)に2点を先行されながらもV川崎が追い付いてPK戦の末に連覇。97年は鹿島アントラーズが3-2とV川崎を終盤に逆転して初優勝した。
延長戦を採用していないこともあって、今回まで32回の大会で9回がPK戦決着。もっとも、0-0でのPK戦は1度もない。勝利のために相手を分析して良さを消すのは普通だが、この大会は新シーズンに向けてオフの間に培ってきた自分たちの武器を試す場でもある。新戦力を含めて新しいチームの姿をサポーターに披露することも重要だ。相手の良さを消すよりも、自分たちの姿を見せる。そんな大会だからこそ、点の奪い合いが見られるのかもしれない。
もっとも、近年は大会そのものの意味も薄れてきたようだ。タイトル戦とはいえ、優勝賞金は第1回から3000万円で変わらない。アジアチャンピオンズリーグなどで日程は過密になり、この日の神戸は主力の多くを温存してスタメンを組んだ。
シーズンが始まる「ワクワク感」も希薄になったのかもしれない。特定のクラブのサポーターは待ち遠しいだろうが、サッカー自体は欧州リーグなどの映像が大量に流れる。「サッカーを見たい」という純粋な思いは、だいぶ薄くなったように感じる。そういう意味でも、大会の役割は終わったのだろう。
■シーズン制移行後のスーパーカップは「どんなものがいいのか、考えたい」
シーズン制が秋開幕になる26年以降、スーパーカップをどうするかは未定だという。野々村チェアマンは「どんなものがいいのか、考えたい」と話しているが、リーグ戦王者対カップ戦覇者という現在の図式が踏襲されることはなさそうだ。
リーグ戦とカップ戦の王者による「スーパーカップ」は、イングランドのコミュニティーシールド(元チャリティーシールド)など多くの国で行われている。両王者が決まるのは前年のシーズン終盤だから、違和感はない。しかし、Jリーグのシーズンだけを移行することで、天皇杯との期間が半年ずれて違和感が生じる。
実はスーパーカップはJリーグ開幕前の日本リーグ時代にも行われていた。日本リーグ王者対カップ戦覇者で77年にスタート。84年には前年に日本リーグ1部で初優勝した読売クラブが前年度の天皇杯を初制覇した日産自動車を破って優勝している。
日本リーグ終盤からJリーグ黎明期を支えたV川崎と横浜マリノスのライバル対決の始まりに、当時は少なかったサッカーファンも新時代の始まりを感じていた。もっとも、この84年を最後にスーパーカップは終了。春開幕だった日本リーグのシーズンが翌85年から9月開幕の秋春制に移行したからで、今回のJリーグと同じケースだった。
32年で、日本サッカーは大きく変わった。Jクラブは10から60まで増え、代表は出場さえ夢だったW杯で優勝を狙うまでになった。「同一企業の協賛で最も長く開催されたサッカースーパーカップ」として21年にはギネス世界記録にも認定された大会は、時代の流れとともに役割を終える。
決勝戦、国立競技場には集まったのは過去最多の観客。これまでの記録5万3167人は、95年の第2回、V川崎対ベルマーレ平塚(現湘南ベルマーレ)の時だった。サッカーファンをワクワクさせてくれ、Jリーグを盛り上げてくれたスーパーカップ。オールドファンの大会への熱い思いが、30年前の記録を塗り替えたのでは勝手に思っている。(荻島弘一/ Hirokazu Ogishima)
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