日本人“衝撃弾”に英国度肝「守備的MFだろ!?」 惜敗に悔しさも…示したプレミア級の可能性【現地発コラム】
FOOTBALL ZONE / 2025年2月12日 21時10分
■岩田智輝がFA杯4回戦で決めた衝撃ゴール「イメージ通りでした」
岩田智輝が、ビッグゲームで衝撃度絶大なゴールを決めた。
2月8日のFAカップ4回戦で、リーグ1(3部)優勝争いをリードするバーミンガムが、プレミアリーグでトップ6を争うニューカッスルをホームに迎えて演じた接戦(2-3)のハイライト。それは、開始1分足らずで格下に訪れた先制シーンでもなければ、後半に総合力の差を見せ始めた格上が決勝点を奪ったシーンでもない。間違いなく、前半40分に岩田の右足がバーミンガムに2点目と自信をもたらした瞬間だった。
ゴール正面右寄り22メートルほどの距離から、時速約117キロとも報じられた弾丸ミドルを叩き込んだ当人が、試合後に振り返ってくれた。
「相手の選手がクリアする瞬間、あそこらへんにこぼれてくるだろうなっていう予測はあったので、そこにタイミング良く、かといってあまり入りすぎずにシュートを打てた。イメージ通りのゴールでした」
満員の2万8000人近くを集めたセント・アンドリューズのボルテージは、最高潮に達した。セーブには定評のある相手GKニック・ポープは、背後のゴール右上隅に風穴を空けられて呆然。ゴール裏スタンドに陣取ったニューカッスル・サポーターたちも、度肝を抜かれた様子。ほかの全スタンドを埋め尽くしたバーミンガムのファンは、狂喜の大歓声から間髪いれず、高らかにクラブ賛歌『キープ・ライト・オン』を合唱し始めた。
岩田が、いち早くクリアボールの落下地点へと動き出した時点で、ホーム観衆は「シュート!」と叫んでいた。昨夏にセルティックから獲得された新MFは、いずれもセーブの効かないシュートですでに6得点を記録済みだった。しかも、うち4本はミドルでもあったのだから無理もない。だが実際には、ファンの期待をも凌駕する珠玉の一発が、人々の脳裏にも強烈に刻み込まれた。
キックオフ直前に暗転して炎や花火が上がった演出後、蛍光灯が消えたまま半暗闇状態だった記者席でも、「ワォ!」という驚嘆の声がそこかしこで上がった。ハーフタイム中には、「何てシュートだ!」「超光速ロケット!」「守備的MFのはずだろ!?」「チームの今季ベストゴール決定!」などと、同じ日本人として祝福の声を掛けられた。
■バーミンガムの可能性と岩田
肝心のピッチ上で唯一の日本人は、敵に傾きかけていた流れを自力で引き戻したとも言える。前半15分辺りからボールを支配され始めていたチームは、同21分からの5分間で1-2とスコアもひっくり返されていた。その数分後には、国内3部リーグ史上最高となる金額で、昨季のレンタル先だったバーミンガムに完全移籍したジェイ・スタンスフィールドが、21歳のストライカーにすれば、10回に9回は決めているような絶好機を逃す場面も。続いて、逆にあわや2点ビハインドという危機を迎える過程では、岩田自身も、味方のボールロストからカウンターで攻め上がる相手FWジョー・ウィロックにかわされていた。
しかし、バーミンガム中盤の新レギュラーは、怯みも引き下がりもしない。相手ボール時に注視していた敵のアンカー、ブルーノ・ギマランイスとの競り合いで身体を張ってスローインを得たのは、前半37分。その2分後には、相手ボックス内に走り込んでリターンパスを受け、味方のシュートチャンスを演出。そして、自ら強烈にネットを揺らし、2-2と試合を振り出しに戻してみせた。
バーミンガムというチームの可能性を示すゴールでもあった。2年前からアメリカ系資本下にあるクラブは、結果的には裏目に出ることになったものの、昨季途中のウェイン・ルーニー監督指名からも窺えたように、国際的な知名度を欲している。当然、世界最大級の人気を誇るプレミアへの2011年以来となる復帰も。まさかの3部転落を見た昨季を経て積極補強が施された今季のチームも、まずは即座の返り咲きを狙うチャンピオンシップ(2部)級の戦力をすでに備えている状態だ。
その1人に、岩田がいる。今季から指揮を執るクリス・デイビスは、かつてコーチとして仕えた経緯のあるブレンダン・ロジャーズとアンジェ・ポステコグルー(現トッテナム監督)という新旧セルティック指揮官による評価も確認したうえで、昨夏の獲得を希望。ボールを持って攻めるスタイルを実践するチームの中盤において、技術、判断、そして機を見て得点に絡むセンスの良さを持つ岩田が持つプレミア級の潜在能力には、今季前半戦の段階から言及していた。
■プレミア6位に感じたクオリティの差
当の岩田も、チームの腹筋とも言うべき中盤中央を強化しつつ、自ら敵にパンチを見舞う意欲も口にしてきた。
「二桁ゴールを目指したい。自分がゴールやアシストをすることによってチームの助けになると思っているので、意識高くやっていきたい」と話してくれたのは、ベンチ温存となったFAカップ3回戦後。続く2週間は筋肉系の怪我で戦列を離れたが、「今は全然、大丈夫です」と言えるようになっていた4回戦では、プレミアでもそうそうお目にはかかれない極上のボレーで、移籍先での得点数を「7」に伸ばしてみせた。
現時点では、チームとしても個人としても、まだ「ポテンシャル」の世界であることは言うまでもない。主戦場となっているリーグ1でも「凄くいい選手はいるなと感じます」と言う岩田だが、やはり対戦時プレミア6位との84分間を終えたあとに認めていた。
「リーグ1だと、こっちがニューカッスルみたいなプレーをできていると思いますけど、それを逆の立場でやられた感じですね。(自分たちの)プレーのクオリティは、ちょっとしたミスも多かったですし、リアクションになるシーンが凄く多かった。予測という部分でちょっと遅れている部分もありましたし、簡単に抜かれるシーンもあったので、1人1人の対人の強さで差を感じたところはあります」
相手の1点目は、3部リーグ勢のスタジアムでもゴールラインテクノロジー利用が可能であれば、ノーゴールだったのではないかと思われる。ただし、ハーフウェーライン付近にいた岩田の2メートルほど横を通過した楔のパスを受けると、背負ったマークをものともせずに前を向き、チャンスのきっかけとなるクロスを放った相手CFカラム・ウィルソンの能力は否定し難い。
2失点目に至るシーンでは、後方からフィードを受けた相手FWウィリアム・オスラのファーストタッチが全て。普段は控えの21歳にワンタッチで味方のマークを剥がされ、サポートに駆けつけようとした岩田も距離を詰められなかった。
後半37分にウィロックに決められた勝ち越し点は、層の厚さでも勝るニューカッスルに対し、バーミンガムには疲れが見えていた時間帯に素早いパスワークで崩された。ベンチを出て敵のクオリティを高めた1人には、ハーフタイムを境にギマランイスと代わってプレーメイクをこなし始めた、サンドロ・トナーリがいた。
だが、このような試合であればこそ、今後の血となり肉となり得る要素もあったはず。岩田は、惜敗後にも下を向くことなく、こう締め括った。
「負けて当たり前じゃないですし、もちろん勝つつもりで試合に挑んでいるので、この負けは凄く悔しい。そのなかでも、自分のプレーという部分も課題が見つかって、もっともっと伸ばしたい、伸ばさないといけないところも見つかったので、凄くいい試合でしたし、いい経験になったとは思います」
今季FAカップでの戦いは終わったが、バーミンガムと岩田の上を目指す戦いは続く。雨を避けてトンネルの入り口で行われた取材を終えると、奥でニューカッスル側の取材を終えたタイムズ紙の記者も戻ってきた。20年以上の付き合いになる彼は、雨と寒さを嘆きながら、「それにしても凄いゴールだったな。(2部で)プレミア昇格にチャレンジするはずの来シーズンは、ちょくちょくここに来ないといけないんじゃないの?」と言って微笑んでいる。
ロンドンからイングランド中部のバーミンガムまでは、特急が運休だったこの日は電車で片道3時間弱。列車の駅からスタジアムまでは、軽く徒歩30分。それでも、セント・アンドリューズのピッチ上で日本人MFのプレミア級ポテンシャル開花を生で見届けることができるのであれば、スタンドに座るこの日本人としても望むところだ。(山中 忍 / Shinobu Yamanaka)
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