世界初の「仮想通貨」長者番付 富を得たパイオニア19人

Forbes JAPAN / 2018年7月5日 17時0分

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その価値も、評価も大きな振れ幅で変動を続けている仮想通貨。どのような人々が、どれだけ、この新しい仕組みのなかでの富を得ているのだろうか。

仮想通貨の世界では、何十億ドルもの富が一夜にして築かれることもある。そこではスピードこそがすべて。そして、CZことジャオ・チャンポンは、他の誰よりも速い。この41歳の中国系カナダ人プログラマーが経営する仮想通貨の取引所「バイナンス」は、創業から180日も経たないうちに世界最大規模となった。
 
仮想通貨によって尋常ではない富を瞬時に手に入れたのはCZだけではない。仮想通貨熱が盛り上がりを見せた今年1月前半、IT業界の古株クリス・ラーセンの純資産額は200億ドル(約2兆円)前後に達した。ラーセンが所有する仮想通貨XRPはその後65%下落したが、彼は依然、本誌が初めて選出した仮想通貨長者のトップだ。

暗号資産の種類はいまや1500近い。その規模は5500億ドルにも達し、2017年初めの31倍になっている。個々のコインの価格は変動を続けており、ビットコインなどはピーク時の2分の1になったが、それでもはっきりしていることがある。ブロックチェーンを基盤とする通貨が今後も存続し、不安定で投機的であってもその暗号資産がリアルな価値を保持していくだろうということだ。
 
ブラックマーケットでの取引や個人の節税手段、北朝鮮のような国々による制裁逃れなどが需要に火をつけたのは確かだが、同時に、この技術に対する期待や、国民国家の気紛れからマネーを開放したいというイデオロギー的願望も働いている。
 
このデジタルな”宝くじ”の当選者たちは、これまでのバブルの勝者たちとは一線を画している。アナーキーでユートピア主義的で、リバタリアン的でもあった仮想通貨の黎明期。集まってきたのは反体制的な暗号技術オタクや、電力を大量消費する「マイナー(採掘者)」、先見の明のあるシリコンバレーの出資者、単なる幸運な「ホドラー(長期投資型投資家の別称)」といった種々雑多な変わり者のパイオニアたちだ。

ただし、これまでのどのゴールドラッシュがそうだったように、仮想通貨の場合も投機に走った者より、「選鉱鍋」と「つるはし」を売った者、つまりこの場合は取引所を経営した者のほうが確実にひと山当てたのだった。
 
仮想通貨の最大の勝者を特定し、その財産規模を推定することは、容易ではない。仮想通貨はグローバルな金融システムの、ほぼ完全に外側に存在しているし、新たに出現した仮想通貨の長者たちは異様な秘密主義や仰々しい外見がない交ぜの奇妙な環境に住んでいるからだ。

不透明性と仮想通貨の極度のボラティリティ(変動性)を考慮し、リストに掲載する推定資産額には幅を持たせることにした。金額の根拠としたのは仮想通貨の推定保有高や、暗号資産のトレードで得た税引き後の利益、仮想通貨関連ビジネスの持ち分などだ。
 
本誌が何人かを見落としていたり、一部の推定額が大きく外れていたりすることはほぼ確実だ。だがそれは、1982年に最初の「フォーブス400」をまとめた時も同じだった。当時は多くの人から、そんなものは発表すべきではないと言われたものだ。
 
それでも私たちは、今年2月にまとめた結果を発表することにした。隠れた富裕層に光を当てることで、この世界をよりよい場所にできたと固く信じている。仮想通貨の歴史をたどれば違法薬物サイト「シルクロード」や「マウントゴックス」の巨額流出事件に突き当たる。やはりこれだけ巨大な富を、社会の陰に潜ませておくべきではないのだ。


3位、バイナンスCEO ジャオ・チャンポン

1. クリス・ラーセン(リップルの共同創業者)
─仮想通貨資産:75億〜80億ドル

スタンフォード大学でMBAを取得した、シリコンバレーの経験豊かな起業家。ラーセンとジェド・マケーレブが2012年に創業したリップル社はブロックチェーン技術を活用し、銀行間の国際決済を円滑に行うシステムを開発した。18年1月、リップルが発行する仮想通貨「XRP」は市場で最高値を更新、ラーセンが保有する52億XRPは一瞬で約200億ドルに跳ね上がった。

現在、三菱UFJフィナンシャル・グループ、バンク・オブ・アメリカ、サンタンデール銀行など100社以上の金融機関がリップルのシステムを導入している。現在ラーセンはCEOを退き、エグゼクティブ・チェアマン。

2. ジョセフ・ルービン(イーサリアムの共同創業者、コンセンシスの創業者)
─仮想通貨資産:10億〜50億ドル

コンセンシスは、社員600人を擁する世界最大手のブロックチェーン企業。企業にセキュリティ監査や仮想通貨の新規発行などのサービスを提供している。ルービンはロボット工学の分野でキャリアをスタートし、その後金融分野に転向。金融取引システムの開発、ヘッジファンドの運用、富裕層の資産管理などに携わった。イーサリアムが発行する通貨イーサの最大の保有者だと見られている。

3. ジャオ・チャンポン(バイナンス CEO)
─仮想通貨資産:11億〜20億ドル

バイナンスは設立から7カ月で、1秒あたり140万件の取引を処理し、600万人のユーザーを抱える世界最大の仮想通貨取引所に急成長した。2017年7月のICO(新規仮想通貨公開)以降、バイナンスコインは約10セントから13ドルに高騰、時価総額は13億ドルに達した。

モントリオールのマギル大学でコンピュータサイエンスを学んだジャオは、東京証券取引所やニューヨークのブルームバーグなどで取引システムを構築。13年にビットコインの存在を知って仮想通貨プロジェクトを次々と渡り歩くなかで、仮想通貨に特化した取引所の開設を決意。バイナンスの創設にこぎつけた。

4. タイラー&キャメロン・ウィンクルボス兄弟(ウィンクルボス・キャピタル共同創業者)
─仮想通貨資産:各々9億〜11億ドル

双子のウィンクルボス兄弟は、マーク・ザッカーバーグに出し抜かれた体育会系のエリート兄弟として有名だ。フェイスブックの株式と現金6500万ドルを和解金として手にした2人は2012年、それを元手にビットコインへの大々的な投資を開始し、13〜15年の暴落時もイーサなどの仮想通貨に資金を投入。15年にはニューヨークで仮想通貨の取引所「ジェミニ」を開設した。

5. マシュー・メロン(個人投資家)
─仮想通貨資産 9億〜10億ドル

アメリカの金融財閥の1つ、メロン財閥の跡取りでニューヨーク共和党財政委員会の会長を務めたことも。家族に反対されつつ数年前から仮想通貨への投資にのめり込み、リップルが発行するXRPには200万ドルもつぎ込んだ。既存の金融機関にも導入されている数少ない仮想通貨の1つだったからだという。

メロンが保有するXRPの価値は約10億ドル。メロンは「10億ドルをタダで手に入れたようなもの。当時進んでXRPを買おうとしたのは私だけだった」と話していた。メロンは、長く薬物依存に苦しんでいることが知られ、仮想通貨への投資は依存症の影響だと家族に止められたことも。薬物依存症を克服できず2018年4月16日に死去

6. ブライアン・アームストロング(コインベース CEO)
─仮想通貨資産:9億〜10億ドル

2012年に創業したコインベースは、小口、大口を問わず、投資家に仮想通貨売買の場を提供する仮想通貨取引所の運営会社。米国歳入庁(IRS)との法廷闘争に苦しめられてきたが、それでも顧客を増やし、高めの手数料で利益をあげてきた。コインベースは米国のiPhone向けアプリではダウンロード数トップ。月間ユニークユーザー数は430万人に達している。17年には10億ドルを売り上げた。


7位 マシュー・ロスザック(左)、9位 ブロック・ピアス(右)

7. マシュー・ロスザック(Bloq共同創業者、タリーキャピタル創業者)
─仮想通貨資産:9億〜10億ドル

ロスザックが初めてICOに参加したのは2013年。ICOという言葉すらなかったころから、マスターコインやファクトム、メイドセーフなどの仮想通貨を購入していた。IT起業家、ベンチャーキャピタリストとして活躍していた経歴もある。

13年、サンフランシスコを拠点とするブロックチェーンキャピタルの初のファンドに出資。自己資本で設立したタリーキャピタルは、コインベースやクラーケン、BTCCなどの大手仮想通貨取引所にも投資してきた。ブロックチェーンの熱烈な信奉者で、リチャード・ブランソンやビル・クリントン元大統領に初めてビットコインをプレゼントしたのはロスザックだった。

8. アンソニー・ディ・イオリオ(イーサリアム共同創業者、ジャックス、ディセントラル創業者)
─仮想通貨資産:7億5000万〜10億ドル

ディ・イオリオは家業の住宅建築業などの経営に従事していたが、金融危機を契機に経済学に触れ、「お金とは何か」を追求。仮想通貨に情熱を抱くようになった。「ビットコインのコンセプトはすぐ理解できた」という。数十万ドルをイーサリアムの開発資金につぎ込む一方で、クアンタム、ヴィチェーンなどの仮想通貨にも投資。初期段階で投資し、成功後に新たな通貨へ投資するのが彼の戦略だ。

9. ブロック・ピアス(ビットコイン財団会長、ブロックワンのアドバイザー)
─仮想通貨資産:7億〜10億ドル

ピアスはエンターテインメント事業を通じて仮想通貨に出会った。元子役のピアスは17歳にして「ユーチューブ」の先駆けと言われるデジタル・エンターテインメント・ネットワークを共同設立。熱心なゲーマーだったピアスは2000年代、オンラインゲームで仮想通貨取引を行う企業を設立。

中国で数千人ものゲーマーを雇い、テレビゲームのプレーで賞品を集めさせ、それを世界中のゲーマーに売って現金を得る仕組みをつくった。その後、仮想通貨企業の支援に参入。出資した企業には、マスターコイン、ブロックチェーンキャピタル、コインベース、イーサリアム、テザー、ビットフューリーや、いま話題のブロックワンがある。

10. マイケル・ノボグラッツ(ギャラクシーデジタル CEO)
─仮想通貨資産:7億〜10億ドル

ノボグラッツが仮想通貨への投資を始めたのは2013年。15年にはフォートレス・インベストメント・グループを退社、仮想通貨に集中することにした。トレーダーとして儲けるためだ。現在の仮想通貨は「バブル」。はじける前にできるだけ利益を上げることを自身の目的にしている。仮想通貨取引による利益は、カナダでの上場を目指すギャラクシーデジタルに入ることになっている。

11. ブレンダン・ブラマー(ブロックワン CEO)
─仮想通貨資産:6〜7億ドル

アイオワ出身のブラマーは弱冠14歳で仮想通貨の旅を始めた。オンラインゲームのアバターや魔法の武器の販売などを経て、2016年にダン・ラリマーとブロックワンを設立。同社のトークンEOSの発行にはブロック・ピアスがアドバイザーとして加わっている。ブロックワンはブロックチェーンプラットフォーム「EOS.IO」を開発。EOSはこれまでに10億ドル以上を調達、世界最大のICOとなった。

12. ダン・ラリマー(ブロックワン CTO)
─仮想通貨資産:6億〜7億ドル

バージニア工科大卒で軍事産業出身のラリマーは、兵器ではなく人に生きがいや財産を与えられるシステムをつくりたいと、2013年、コミュニティによって運営される仮想通貨取引所「ビットシェアーズ」を創設。16年には新たにブロックチェーンベースのSNS「スティーミット」を設立した。スティーミットの通貨「スティーム」はここ数カ月で急騰し、その時価総額は一時14億ドルに達した。


13位 バレリー・バビロフ(左)、17位 ヴィタリック・ブテリン(右)

13. バレリー・バビロフ(ビットフューリー CEO)
─仮想通貨資産:5億〜7億ドル

バビロフは1980年代のラトビアで育ち、91年のソ連崩壊を体験。貨幣や特許が一夜にして価値を失うのを目の当たりにし、経済・金融の分散型フレームワークの必要性を痛感した。2011年、ビットコインのマイニングを手がける「ビットフューリー」を設立。資金調達が順調にいかなかったことから、マイニングで得たビットコインを30ドルという低価格で売却し、資金を調達した。

バビロフによれば、ビットフューリーが創業以来マイニングしたビットコインは約80万枚になるという。プロセッサーチップやモバイル向けビットコイン・マイニング専用マシンの開発・販売も手掛け、18年は4億ドルの売り上げが見込まれている。

14. チャールズ・ホスキンソン(イーサリアム、IOHK共同創業者)
─仮想通貨資産:5億〜6億ドル

ホスキンソンは2013年にコンサルティングをやめ、ビットコイン教育プロジェクトというオンラインスクールを開設。イーサリアムの創業メンバーにも名を連ねた。その後、企業や政府機関、研究機関のために仮想通貨およびブロックチェーンを開発する新プロジェクト「IOHK」に参加。収入はすべてビットコインで受け取るため、ビットコインの高騰でIOHKは莫大な利益を得ることになった。

15. ブラッド・ガーリングハウス(リップル CEO)
─仮想通貨資産:4億〜5億ドル

ガーリングハウスはファイル共有サイトHightail(旧YouSendIt)のCEO、AOLのコンシューマー&アプリケーション部門社長、ヤフーの副社長を歴任した輝かしい経歴を持つ。リップルは613億XRPを保有、時価総額は950億ドルになるがベンチャーキャピタリストによる企業評価額は低い。今回はガーリングハウス個人が保有するXRPをもとに資産を算定、仮想通貨ビリオネアにランクインした。

16. バリー・シルバート(デジタル・カレンシー・グループ CEO)
─仮想通貨資産:4億〜5億ドル

シルバートはIT企業の未公開株など金融商品向けの取引所、セカンドマーケットの創設者として知られる。その後、デジタル・カレンシー・グループを設立。コインベースやリップルなど仮想通貨関連企業に投資するベンチャーキャピタル事業、仮想通貨への投機や上場投資信託(ETF)のビットコイン・インベストメント・トラストの運営、仮想通貨メディア「コインデスク」の運営などを行っている。

17. ヴィタリック・ブテリン(イーサリアム開発者)
─仮想通貨資産:4億〜5億ドル

ブテリンは、仮想通貨業界では誰もが知る存在。10代でビットコインマガジンを創刊したブテリンは、若者に起業のチャンスを与えるティール・フェローシップを受けるために大学を中退。その後、旅をするなかでビットコインの限界に気付き、イーサリアムのホワイトペーパーを書き上げた。

イーサリアムは単なる仮想通貨というより、貧困層向けの複雑な金融商品のオープンソース・プラットフォームを提供するプロジェクト。その後、時価総額は1000億ドルほどに膨れ上がった。現在、マイクロソフト、BP、JPモルガン・チェースなどの企業が連携して、イーサリアムをビジネスに導入するための研究・開発を行っている。

18. ティム・ドレイパー(ドレイパー・アソシエイツ創業者)
─仮想通貨資産:3億5000万〜5億ドル

ベンチャーキャピタリスト、ドレイパーが仮想通貨への投資を考え始めたのは15年前。ビットコインの噂を聞いた瞬間「これだ!」と、1ビットコイン6ドルだった時代に25万ドルも投資した。2014年の「マウントゴックス」破綻ですべて失ったが、同年の競売で2000万ドル足らずで約3万2000枚のビットコインを手に入れたといわれる。将来は、世界の商取引の大半は仮想通貨で決済されると確信している。

19. ソン・チヒョン(トゥナム CEO、アップビット創業者)
─仮想通貨資産:3億5000万〜5億ドル

ソンのアップビットは創業からわずか4カ月で、韓国最大の仮想通貨取引所として、2017年12月まで1日あたり平均取引高47億ドルを誇ってきた。名門ソウル大学でコンピュータサイエンスと経済学を学んだソンは12年に「トゥナム」を設立。インターネット最大手カカオから続けて出資を受け、モバイル証券取引アプリ「カカオストック」を開発した。ユーザー数は現在30万人超。

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