命を懸けて英国を目指す移民が後を絶たない理由

Forbes JAPAN / 2019年1月18日 8時30分

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英国は、最高のときと最悪のときを同時に経験している。どちらと見るかは、どのようなナラティブを信じるかによって変わるようだ。

他人の金で賭けをする投資家らは、英国から欧州に移ることを示唆している。その一方で、英国を目指す移民らは自らの命をいちかばちかに賭けることもいとわない。

賭けの度合いを考えると、英経済の魅力を示す指標として信頼できるのはおそらく後者だろうと私は思う。

銀行幹部は逃げる準備

ロンドンの銀行幹部らは、ブレグジット(英国の欧州連合離脱)により、パリやフランクフルトに移る覚悟を決めている。事業を続けるためにはブレグジット後、ロンドンを去らなければならないことを嘆いているのだ。

投資家らも、ブレグジットが決まった2016年6月の国民投票以来、英国を敬遠してきた。ブルームバーグのデータによると、ブレグジット投票前は1.44米ドルほどだった英ポンドは、最近では1.28米ドルほどまで下がっている。英ポンドの弱さは、英国が欧州連合(EU)とどのような合意を結ぶかが不明瞭な事実を反映したものだ。投資家は不安定な状態を嫌うため、雲が晴れるまでの間は他の場所に金を置いておく。つまり、より多くの情報が明らかになるまで様子をうかがっている状態なのだ。

命を懸ける移民たち

一方で、移民は英国に押し寄せ続けている。そのために法を犯し、命を危険にさらす必要があったとしてもだ。英国のサジド・ジャビド内相は昨年12月末、英仏海峡を横断して英国への不法入国を試みる移民の深刻な問題に対応するため、休暇を早めに切り上げた。

小型ゴムボートで英仏海峡を夜間に横断する人の数は増えている。何も知らなければ簡単なことにも思えるこの航海は実は危険で、溺死や凍死の危険性がある。英仏海峡は最も短い地点では22マイル(約35キロメートル)しかないが、同時に世界で最も交通量の多い海峡でもある。この旅はただでさえ非常に危険なものだが、夜間に横断することで死に至る危険性が上がる。ジャビド内相が仏政府と協力し、違法な海峡横断を減らそうとしているのは、まさに命を救うためなのだ。

英仏海峡の違法な横断は、3月29日に控えたブレグジットの期限が刻一刻と迫る中で増加している。移民たちは、ブレグジット後に英国に入国すれば、その前になんとか到着した場合より生活が厳しくなると考えているのだ。

英仏海峡横断の試みで命を落とす可能性が高いことは既に分かっている。移民自身もその事実を理解しているが、それでも密輸業者に金を払って英国入国を試みる人は絶えない。

欧州各国の経済評論家は、この事実を熟慮する必要があるかもしれない。フランスの名目上の経済規模や1人あたりの国内総生産(GDP)は英国と同程度で、フランスの人権保護水準も英国並みに高い。それに加え、フランスの多くの地域の天候は英国より良好だ。

それでも、メキシコから米国への移民が後を絶たないように、移民はフランスから英国へと移動することを求めている。米国を目指す移民と同様、その理由は経済にあるようだ。米国が、メキシコと比べて経済的にはるかに豊かな国だということを疑う人はほとんどいないだろう。

英国も経済的に裕福な国で、フランスにはない機会を提供している。経済情報サイトのトレーディング・エコノミクス(Trading Economics)によると、フランスの失業率は9.1%で、英国の失業率(4.1%)の倍以上だ。英国の方が、フランスよりも働けるチャンスが多いのだ。

移民もどうやらこのことを知っているようだ。

一部の人は、経済は多くの要素の一つでしかなく、英国が移民を引きつける理由には他にも、生活保護の手厚さや難民関連法の寛容さなどがあると主張している。たとえそうだとしても、英経済は新たな移民を吸収する十分な活気を備え、気前良く振る舞うだけの経済力を持っているようだ。これは抑圧的な政府など、苦難から逃れてきた人たちに安全な港を提供してきた英国の数世紀にわたる歴史を反映している。

Forbes JAPAN

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