お洒落が大好きな私が行き着いたのは、世界中のおじさんたちの素敵な着こなし。渋くて、だけどどこか愛嬌があって、嫉妬心にも近いおじさんへの憧れは、年々増すばかり。そして秋は、なぜだかその熱がいっそう高まるのだ。憧れる6 人のおじさんのファッションについて、研究してみたはなし。
ワイルドな英国ジェントルシャーロック・ホームズ
19 世紀末ロンドンの名探偵といえば、シャーロック・ホームズ。鹿撃ち帽とインバネスコート姿の“いわゆる” なホームズもいいけれど、私が真似したいのはガイ・リッチー監督が描くちょっと気怠そうでワイルドなホームズ。ネクタイを締める代わりに襟を開けて、柄スカーフで遊び心を。推理も粋なセンスも冴え渡る、重ね着上手な英国紳士。
日本の国民的おじさん寅さん
生まれも育ちも葛飾柴又。惚れっぽくて何かと騒ぎを起こすけれど、憎めないのがフーテンの寅さん。あまりにもお馴染みなその装いは、実はすごくお洒落なんじゃないかと思っている。例えば仕立てのいいスーツを草履で着崩す粋なセンス! 今ならソックスとサンダルで真似してみたい。大事なアクセントの首に下げているお守りは、キーネックレスに置き換えて。
80年代に現れたカラフルな才人ビートたけし
今でこそピシっしたダークスーツがお似合いのたけし先生だけれど、80~ 90 年代の彼のトレードマークといえば、カラフルな幾何学模様のセーター。“誰が着こなせるの? ”という派手なセーターだけれど、着こなすどころかそのインパクトに負けない程の存在感を、当時から放っていたらしい。“たけしニット”と呼ばれるそれは、めぐりめぐって今再熱中!
ナードなアメリカンマン ウディ・アレン
アメリカンカジュアルなら、映画『アニー・ホール』の神経質で皮肉屋なあのおじさんを参考に。衣装は、監督、主演を務めたウディ・アレンと親交の深いラルフ・ローレンのクローゼットから引っ張り出したというから、そりゃあ素晴らしいはず。ミリタリージャケットにチェックシャツ、チノパンと、ニューヨーカーらしさ満点のカジュアルルックが最高!
クラシックなゴルフの紳士舘ひろし
舘さんの紳士なゴルフスタイルに欠かせないのは、なんといってもニッカポッカ。ゴルフが好きだから穿いていると思いきや、どうやらこのニッカポッカが穿きたくてゴルフを始めたとか……? それでいてその実力も一流というから、かっこよすぎる。ベストやハンチング帽で引き締めた英国トラッドなゴルフスタイルは、日本一、いや私の中では世界一だ。
力の抜けたフレンチオンクルジャック・タチ
日本が誇る“たちさん” のお次は、素敵なおじさんフランス代表、こちらの“タチさん”。監督、主演ともにジャック・タチが努めたコメディ映画『ぼくの伯父さん』に登場するおとぼけなユロおじさんの装いは、何年経っても色褪せないベーシックスタイル。つんつるてんな丈のパンツからしましまソックスを覗かせて、映画同様にフレンチエスプリを効かせたい。
photograph_Sakai De Jun
styling_Tamura Kazuyuki
hair&make-up_Onishi Akemi
model_Izzy
edit_Shibata Moe
design_Yamamoto Katsura
FUDGE vol.255 2024年10月号より