一年に一度の文化遺産の日。
この日は普段入れないモニュメントや歴史的建造物に、無料で入れる週末です。
最初はヴァンドーム広場にあるブシュロンへ予約せずに行ったのですが、直前に1人キャンセルがあったようで幸運にも入れてもらえることになりました。
ガイド付きで2時間、5階建ての建物を案内してもらいました。
一階奥のお店の奥には創業者のブシュロン氏の肖像画がありました。
当時、ジュエリーは夫人、ダンサー、そして売春婦のものでした。
愛人がいる男性は一日2回宝石を買いに来ることもあり、夫人と愛人がはち合わせしないように隠れ部屋があり、入口と出口は別々になっていました。
ジュエリーの輝きが眩しく、ずっと見ていられる美しさ。
調度品も美しい。植物や動物をモチーフにしている指輪やブローチ、ネックレスは繊細な部分までこだわって作られています。
3階部分にある図書館は18世紀に作られた中国の壁紙でした。当時流行っていたオリエンタルなシノワズリーはパリのいくつかの美術館でも見られます。
この日のために並べられた特別なプライベートコレクションは写真不可でしたが、どれも奇想天外なジュエリーばかり。
タンポポの綿毛のデザインのブローチは小さなダイヤの周りに短い羽根を取り付けてあり、見た目は綿毛そのまま、ふわふわです。
細かく繊細に揺れる花のようなジュエリーや、光に当てると透ける石、ネックレスを分解してブローチやイヤリング、なんとティアラにもなる改造できる豪華なコフレ(ねじ付き。お手伝いさんがこれらを用意したそうです)。レースの繊細さを表現したリボンとダイヤを合わせたブローチ、カブトムシの形のブローチは足の裏側まで本物のような正確さで作られていました。
1928年、パティアラのマハラジャは約100人の妻に宝石を分け与えるためにブシュロンに前代未聞の150もの宝石の注文をしたんだとか。語り継がれる伝説となっています。
建物の5階部分は顧客が宿泊できるアパルトマンになっていて、スペシャルオーダーのためにここでデザイナーや職人と直接対話することもできる贅沢な場所。
もちろんヴァンドーム広場が見渡せます。
そして向かったのがパレ ロワイヤルにある連邦政府庁舎。13年ぶりに入りました。バルコニーからはパレ ロワイヤルの庭の木々が見れて最高です。
長官のお部屋の装飾はとても豪華でした。
2日目は友達に誘われてシャネルのオートクチュールの刺繍の学校、ルサージュへ5人で行ってきました。
刺繍の世界では有名で、私の生徒さんも何人かこちらを卒業されています。
デモンストレーションされている方は日本人の方お二人でした。
A4サイズの作品を作るのに45時間もの時間がかかります。
ツイードはこんな感じで作られています。
そして私が大好きな場所、マレ地区にある貴族の館、シュリー館。
私はパリに住み始めた時からエッフェル塔や凱旋門に興味がなく、貴族の館巡りをしていました。
この大邸宅内は想像していなかったとても小さな部屋がいくつかありました。
イタリア式の貝やマスカロンが装飾になっています。この部屋を貴族たちは何でも話せるサロンとして使っていたようです。
ヴェルサイユ宮殿より以前に建てられた豪華な豪邸。中庭のフランス庭園は車の喧騒はなく鳥の囀りだけです。
手刺繍の豪華なソファや日本製の素晴らしい漆の調度品がありました。
日本は当時絹と陶器が有名でしたが、漆の調度品は本当に珍しいです。
天蓋付きベッド頭上には教会かテアトルかと思うようなクーポール。
外壁の彫刻は4要素を表していて、春夏秋冬の彫刻、火、水、空木、土のシンポルとともに彫刻が見れます。イタリア、ルネサンスのボッティチェッリのヴィーナス誕生の影響で外壁のにも貝の装飾があり、マスカロン(顔の形の装飾)は当時のマリー ド メディシスのようなお顔になっています。
フランスの文化に触れたとても楽しい2日間でした!
text:竹内 仁海
パリ在住13年目。
イタリア人の夫とパリ4区にあるカリグラフィー専門店 “メロディ グラフィック”を経営する傍らカリグラファーとして活躍。結婚式やパーティ、パリコレの招待状や宛名書き、メッセージの代筆、ロゴ制作、フランス映画・コマーシャルの演出アイテムとしてカリグラフィーを担当。
パリから“暮らしの美学”をお届けします。
Instagram:@melodiesgraphiques