クリエイティブチームDo it Theater(ドゥイット・シアター)がテーマごとにおすすめの映画を3作品紹介する、連載《土曜日のシネマサロン》。第128回目のテーマは「Amazonプライム・ビデオで40代女性におすすめ、隠れた名作」です。
Do it Theaterの洲崎真紀子(すさきまきこ)です。この連載はDo it Theater女子部が様々な切り口のテーマで、おすすめ映画をリレー方式でご紹介しています。
今回は「Amazonプライム・ビデオで40代女性におすすめ、隠れた名作」をテーマに、『ステージ・マザー』『マーベラス・ミセス・メイゼル』『ロスト・キング 500年越しの運命』をご紹介します。毎日観ても追いつかないほどたくさんの映画やドラマが配信されていますが、40代筆者が「見逃さなくてよかった」と思った3作品です。ぜひ、チェックしてみてください。
亡き息子への愛が、母を変える
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title:『ステージ・マザー』
【story】
テキサスの田舎町に住む主婦メイベリンは、長い間疎遠だった息子リッキーの訃報を受ける。葬儀のため、リッキーが暮らしていたサンフランシスコへ向かうメイベリン。彼女はそこでリッキーがドラァグクイーンでゲイバーを経営していたことを知る。さらに、彼が遺言も残さず他界したため、バーの経営権が母親のメイベリンにあること、そのバーが破綻寸前の危機にあることが発覚。メイベリンは困惑しながらも、愛する息子の遺したゲイバーを再建するために立ち上がる。
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最初にご紹介するのは、経営難のゲイバーを再建する主婦を描いたハートフルドラマです。
主人公メイベリンは保守的なところがあり、最初は、疎遠になっていた息子がゲイでドラァグクイーンだった事実を受け止められない様子も。けれど息子の夢や彼が自分に対して抱いていた想いに触れて、考えが変わります。失ってから知る、自分らしく生きようとしていた息子。母親を愛していた息子。後悔の念が押し寄せる中、バーを立て直そうと奮起したメイベリンは、息子のパートナーやバーの仲間たち一人一人と向き合い、交流を深めます。
相手を尊重して寄り添ううちに、気がついたらメイベリンは息子のいたコミュニティの中で“みんなのお母さん”的な存在に。これまで知らなかった世界が、いつのまにか自分の居場所になっている。彼女自身もそれを喜んでいるようで、温かな気持ちになりました。
個人的な話になりますが、年齢を重ねた今、仕事でもプライベートでも異なる世代の人と交流する時に自分の考え方をアップデートする必要性を感じる場面が増えました。考えや価値観を変えることは、今の自分を否定するようでネガティブに捉えがちですが、本作を観ていたら「自分が変われば、世界が変わる」とメイベリンに応援してもらえた気がします。
主婦が一念発起、人気コメディアンに!
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title:『マーベラス・ミセス・メイゼル』
【story】
1958年、ニューヨーク。専業主婦のミッジ・メイゼルは、夫のジョールや子供たちと何不自由なく暮らしていた。ところがある日、ジョールが秘書との不倫を告白して家を出ていく。やけになってワインを飲みすぎたミッジは、成りゆきで行きつけの店の舞台に上がり、観客に自身の身に起きた出来事を即興で話して爆笑をさらう。そして彼女はコメディアンになるという驚きの決断をするが…….。
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続いては、Amazonプライム・ビデオのオリジナルドラマ。1950年代のニューヨークを舞台に、主婦がコメディアンに転身して奮闘する姿を描くコメディです。
主人公のミッジは媚びない性格でサバサバしたところがあり、何事にも執着しない「切り替えの早さと上手さ」には見習うべきものがあります。夫が不倫して家出したのに、悲劇のヒロインになるどころか「コメディアンになる!」と決断できる。切り替えのスピードも角度も急ですが、清々しくてカッコいい。出番待ちの舞台袖で同業の男性から嫌味を言われたって気にしない。むしろそれを即興でネタにして観客の爆笑をさらう。メンタル最強です。
何より、クヨクヨ悩んだり落ち込んだりせず、いつも明るく前向きなミッジを見ていると「切り替えが上手い人って、自分の感情をコントロールできる人なんだなぁ」と気づきます。感情の渦に飲み込まれる前に、気持ちを切り替える。このスキルが欲しい女性は多いはず。
本作はシーズン5まで配信されているのですが(完結しています)、主婦のサクセスストーリー的な雰囲気もありつつ、話が進んでいくと男性優位の社会で生きる女性の困難さが浮き彫りになってきて思うところがあるなど、面白さが増していきます。見れば見るほどハマってしまう、まさに名作ドラマです。
信念を貫いた、ひとりの女性の実話
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title:『ロスト・キング 500年越しの運命』
【story】
フィリッパ・ラングレーは職場で上司から理不尽な評価を受けるが、別居中の夫から生活費のために仕事を続けるように言われて苦悩の日々を送っていた。そんなある日、彼女は息子の付き添いでシェイクスピア劇「リチャード三世」を観劇して、リチャード三世が冷酷非情な王として描かれていることに疑問を抱く。やがてフィリッパは、リチャード三世の真の姿を明かそうと、これまで見つけられていなかった彼の遺骨探しを開始する。
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最後にご紹介するのは、500年もの間行方不明だった英国王リチャード三世の遺骨を発見した女性の実話をもとにしたヒューマンドラマです。
主人公フィリッパは、ひょんなことからリチャード三世の遺骨探しをスタートするのですが、知識も人脈も資金もない彼女を信じてくれる人は誰もいません。武器といえばもっぱら直感。歴史研究の専門家はもちろん、友人も家族も理解してくれないのだから、孤独な戦いです。
そんな状況の中で印象的なのは、諦めないフィリッパの姿。独学でリチャード三世に関する知識を得て、資金はクラウドファンディングで集め、協力してくれる専門家を探す…一歩ずつ前に進もうとするたび、心無い声や周囲の無理解に傷つきますが、自分を奮い立たせて目の前の課題を乗り越えていく。その姿に何度も感動させられます。
フィリッパのような大きなことでなくても、生活の中で何か新しいことを始めようとしたり、目標を達成するために努力が必要な時ってありますよね。でも大人になって、諦める理由を探すのが上手くなってきたら要注意。何歳になっても、どんな時も、自分を信じてチャレンジする心を強く持っていたいものです。
今回は「Amazonプライム・ビデオで40代女性におすすめ、隠れた名作」をテーマに、『ステージ・マザー』『マーベラス・ミセス・メイゼル』『ロスト・キング 500年越しの運命』をご紹介しました。主人公の女性たちが魅力的で、明日への活力が湧いてくる作品たち。観たらきっと、前向きな気持ちになれますよ。40代でも何歳でも、ぜひ、チェックしてみてください。
『ステージ・マザー』
出演:ジャッキー・ウィーバー、ルーシー・リュー、エイドリアン・グレニアー
Prime Videoで配信中
『マーベラス・ミセス・メイゼル』
2017年 アメリカ シーズン5
Prime Videoで配信中
『ロスト・キング 500年越しの運命』
2022年 イギリス 108分
Prime Videoで配信中
洲崎真紀子(すさきまきこ)
これまで興行会社やNPOで映画関連事業に携わる。現在は小学生の娘と一緒に映画を楽しむ方法を模索する日々。11月、すでに年末を感じています。来年は地元で映画の上映会をやりたいです。
●Do it Theater(ドゥイット・シアター)
“あたらしいシーンは、Theaterからはじまる”をテーマに、シアター体験を作り出すプロデュース&クリエティブチーム。FUDGE主宰の「Holiday Circus(ホリデーサーカス)」ではコンテンツクリエイションとして参加。また 累計6万人以上が来場した野外シアター「品川オープンシアター」や横浜赤レンガ倉庫・マリンアンドウォークヨコハマなど5会場同時開催の「SEASIDE CINEMA」、ミニシアター支援を目的とし全国5箇所でキャラバン開催したクラウドファンディングプロジェクト「ドライブインシアター2020」など、映画を観るだけではない、総合演出された新しいスタイルのシアター体験を全国に作り出しているチームです。
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edit_Takehara Shizuka