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ニュース裏表 田中秀臣 先祖返りした日銀が闘う「見えないインフレ」金融引き締めのスタンス、日本経済を停滞させた〝奇術〟の核心

zakzak by夕刊フジ / 2024年6月25日 11時0分

金融引き締めを進める日銀の植田総裁(夕刊フジ)

大胆な金融緩和から大胆なイリュージョン(奇術)へ。こうでも形容したいのが、植田和男総裁の日本銀行である。黒田東彦(はるひこ)総裁より前の日銀では、この種の「奇術」が日常的に行われていた。コロナ禍明けで日常が帰ってきたのと同時に、昔の日銀が戻ってきた。

白川方明(まさあき)総裁時代は、デフレ不況が深刻だった。だが、白川日銀は、常に金融緩和をやりすぎて物価が高騰することを警戒していた。当時の日銀が想定していた完全失業率は3・5%ぐらいで、それを下回るとインフレが加速すると政治家や日銀子飼いのマスコミに宣伝していた。

その後、アベノミクスが始まり、失業率は2%台前半まで改善したが、デフレ脱却が見えるかぐらいの物価上昇が起きただけだった。白川日銀は、「見えないインフレ」と本当に闘っていたのである。

この「見えないインフレ」との闘いは、日銀の文化でもある。さらに前の福井俊彦総裁の時代でも、やはり「見えないインフレ」を警戒して早すぎる金融引き締めへの転換を行った。賃金や物価が十分に上がらないのは、経済のグローバル化など構造的要因のせいであり、当時の1%に満たない物価水準でも「見えないインフレ」で危険な状態だと、真剣に福井日銀は考えていた。その結果、早すぎる金融引き締めによって、日本はリーマン・ショックで欧米よりも深刻なダメージを負った。

このような「見えないインフレ」を強調しての金融引き締めスタンスが、日本経済を停滞させてきた「奇術」の核心である。

植田日銀もまたこの「見えないインフレ」との闘いを意識している点では、福井・白川日銀と同様、いやそれ以上である。植田日銀の「奇術」は、日銀内部から見ると、急いでやる必要があるようだ。なぜなら黒田日銀の大胆な金融緩和と、コロナ禍、ウクライナ戦争で、物価がかなり高くなっているからだ。もちろんこの物価の中身を見れば、多くはコストプッシュによるものであり、賃金上昇などの需要要因は弱い。

だが、最近の植田日銀の国債購入の減額方針などをみると、「見えないインフレ」への警戒感は相当なものである。清水季子(ときこ)前日銀理事が海外メディアとのインタビューで「植田総裁はインフレ見通しに確信を抱いている」と発言した。だが、実際にはサービス価格がわずかに上向いただけである。今後、減税効果で多少は内需が増加するが、それが「賃金と物価の好循環」をもたらす可能性は低い。

それでも植田日銀は「見えないインフレ」との闘いという一大奇術で、日本経済をまた停滞に導くのだろう。それは奇術ではなく〝詐術〟に近い。 (上武大学教授 田中秀臣)

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