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山上信吾 日本外交の劣化 外務省の劣化をどうやって止めるか? まず手当てすべき「人材の流出」、「外交力強化のための機構改革」も待ったなし

zakzak by夕刊フジ / 2024年7月28日 10時0分

安倍元首相(夕刊フジ)

外務省の深刻な劣化が進むなか、批判ばかりしていても解決しない。どうやって止めるか?

まず手当てすべきは、「人材の流出」だ。

次官自ら、「ビジネスクラスでなければ海外出張に行かなくてもよい」「残業手当はふんだんにつけた」などと部下におもねったところで、中途退職者の流れは止まらない。「仕事のやりがい」こそ示していかなければならない。

だから、私は駐オーストラリア大使時代の経験を、『南半球便り』(文藝春秋企画出版)、『中国「戦狼外交」と闘う』(文春新書)という2冊の本に残した次第だ。

今の時代、中途退職者はどこにもいる。「去る者は止めず、来る者は拒まず」への発想転換が必要だ。そう、大量の輸血をするのだ。キャリアを含め中途採用を拡充し、しっかりした一線級人材を大使で登用するのも良い。要は、オール・ジャパンで外交に取り組むべきなのだ。

むろん、門戸を広げると、反戦平和団体、反日団体などが、こぞってエージェントを送り込んでくるのは必至だ。セキュリティ・クリアランス(適格性評価)が欠かせないゆえんだ。

第2に、「外交力強化のための機構改革」も待ったなしだ。

国家としての貧弱な情報収集力、とりわけ中国、ロシア、北朝鮮といった権威主義国家がもたらす脅威に対応する体制づくりは急務であり、その観点からは、「対外情報庁の創設」は遅きに失した課題だ。

警察庁、外務省、法務省、防衛省といった既存のいずれかの情報関係省庁の出島にしてはならない。新たな器をつくり、セクショナリズムに捕らわれない情報要員を育成しなければならない。

「貿易交渉や紛争に対応する体制の抜本的強化」も対応が急がれる。各省庁に分散された貿易交渉要員の統合、国内の大手法律事務所との連携を強化した訴訟対応体制の整備こそ、追求すべきだろう。

最後に、「外交に通じ、世界を舞台にした1対1の闘いに強い政治家を育成する」ことだ。40年間外交をやってみて、どこに出しても位負けせず、支え甲斐があった首相は、中曽根康弘氏と安倍晋三氏の2人にとどまった。日本ほどのグローバル・パワーにしては寂しい限りだ。

「中国や北朝鮮のことなら、日本の○○に聞けばよい」「○○の意見を聞いてから対応を考えよう」と言われる政治家は、まずいない。日本全体の発信力の貧弱さを裏付ける話でもあろう。

野球やサッカーの選手が世界であれだけ華々しく活躍しているのに、政治家や外交官は国内のぬるま湯に浸かっているからだ。

政務官、副大臣、大臣と、外交・安全保障に継続的に関わり、世界に顔と名前を売っていく。そして、場数を踏む。英語ができれば越したことはないが、それだけの問題ではない。世界標準のやり取りに習熟していく必要があるのだ。さあ、始めよう。 =おわり

■山上信吾(やまがみ・しんご) 外交評論家。1961年、東京都生まれ。東大法学部卒業後、84年に外務省入省。北米二課長、条約課長、在英日本大使館公使。国際法局審議官、総合外交政策局審議官、国際情報統括官、経済局長、駐オーストラリア大使などを歴任し、2023年末に退官。現在はTMI総合法律事務所特別顧問などを務めつつ、外交評論活動を展開中。著書に『南半球便り』(文藝春秋企画出版)、『中国「戦狼外交」と闘う』(文春新書)、『日本外交の劣化 再生への道』(文藝春秋)。

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