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日本の解き方 国民民主「103万円の壁撤廃」は実現可能か 控除拡大は減税と同じ効果、財務省へのアンチテーゼに 賃金上昇率目標も検討すべき

zakzak by夕刊フジ / 2024年11月2日 10時0分

記者会見を行う国民民主党の玉木雄一郎代表=29日午前、国会内(春名中撮影)(夕刊フジ)

石破茂首相は国民民主党との「部分連合」を視野に入れている。国民民主党は基礎控除の103万円から178万円への拡大、消費税5%などを掲げているが実現可能だろうか。

国民民主党の政策のうち、他党にない「基礎控除等を103万円から178万円への引き上げ」について取り上げたい。

まず、178万円という「中途半端」な数字に驚く。これは、1995年からの最低賃金上昇率1・73倍から、103万円を1・73倍して得られる。103万円は基礎控除と給与所得控除の合計だが、95年に103万円に引き上げて以来、29年間据え置きである。そこで、最低賃金の上昇と合わせて引き上げるべきだというのが国民民主の主張である。ここまで厳密にこだわらなくてもいいが、国民民主党らしいともいえる。

控除の拡大は減税と同じだ。控除額が増えれば、少なくとも所得税として「75万円×税率(年収に応じて5~45%)」の額が手元に残るようになって、手取りが増える。

この政策が面白いのは、財務省は増税しないと言いながら、控除額の縮小を狙う「ステルス増税」をしばしば企むが、そのアンチテーゼになるからだ。

例えば、給与所得控除について「海外と比較すると日本は大きすぎるので縮小しよう」と躍起になっている。一方、基礎控除は日本だけが国際的に低いのは知らんぷりという具合だ。

この「減税」(控除の拡大)でも、財源はどうするのかという反論があるだろう。仮に基礎控除を75万円引き上げると、所得税率が平均10%、住民税率が10%とすれば、7兆円程度の減収額となる。

もっとも、この程度であれば、名目で5%成長すれば自然増収で手が届く範囲であるので、それほど心配する必要はないともいえる。

また、この政策との関連で、最低賃金について、「全国どこでも時給1150円以上を早期に実現する」としている。自民党の「2020年代に1500円」、立憲民主党も「1500円」を掲げているのと比べると控えめな数字である。1500円の方がいい加減な数字であるので、国民民主党に逆に信頼感が出るのではないか。

気になるのは、金融政策に関する公約がないことだ。立民の「0%超の物価目標」は論外であるが、労働者の党である国民民主党が公約に掲げていないのは不自然だ。かつて筆者が玉木雄一郎代表と話したとき、インフレ目標ではなく「賃金上昇率目標」を主張した。

もともとインフレ目標のベースになっているのがインフレ率と失業率の関係を示した「フィリップス曲線」であるが、同曲線は賃金上昇率と失業率の関係が元になっているので、玉木代表の意見には一理ある。

大胆にいえば、インフレ目標2%より、賃金上昇率3~5%のほうが日本経済のためになるので、検討してはどうか。それを消費税5%、社会保険料の軽減、トリガー条項の凍結解除とともに自公政権にぶつけたら面白い。今の自公なら受け入れ余地はあるが、石破政権を退けた後からの方がより有望だろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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