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日本の解き方 米の景気減速リスクと金融政策 FRBが掲げる「2つの責務」日本では報道されない雇用の安定 年内「2回利下げ」のシナリオも

zakzak by夕刊フジ / 2024年8月9日 15時30分

米国の経済指標が予想を下回ったとして、景気減速懸念が広がり、株安の原因にもなった。米連邦準備制度理事会(FRB)は9月にも利下げを示唆しているが、これで対応可能なのか。

7月31日(日本時間8月1日未明)に発表された米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果は、利下げを行わず、8会合連続で据え置きだった。

しかし、直後の8月2日(日本時間2日夜)に発表された7月の米雇用統計では、雇用者数の伸びが市場の予想以上に減速し、失業率はほぼ3年ぶりの水準である4・3%に上昇した。

労働市場が従来の想定よりも速いペースで悪化していることが示唆された。7月11日に発表された6月の消費者物価指数(CPI)は、総合指数が前月比でマイナスに転じていた。インフレ率管理の観点からは喜ばしいが、実体経済としては減速を意味する状況である。

これらの経済指標を受けて、景気が急減速しているとの懸念が高まり、株式市場で売りを誘発、米国債利回りは低下した。

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は7月31日、FOMC会合後の記者会見で、インフレがコロナ禍のピークからおおむね下がってきていることから、「2つの責務」のもう一方への注力を強めており、労働市場への過度な打撃を防ぎたいとの考えを示した。

ここでいう2つの責務とは、「物価の安定」と「雇用の確保」だ。これらは二律背反の関係であるが、これまで、インフレ率の低下を優先させていたが、これからは失業率の低下に注力するというわけだ。

なお、FRBが雇用の安定という責務を持っていることを日本のマスコミはあまり報道しない。先進国の中央銀行は、明示するかしないかに関わらず雇用を安定化させるので、インフレ目標とは雇用政策でもある。また、雇用の安定を図ろうとするあまり、過度なインフレ率になるのを予防する役目も負う。

その意味で、雇用の安定が達成できれは、インフレ目標に達しないことはたいした話ではない。日本のマスコミが、雇用の安定が達成されているのに、インフレ目標未達を非難するのは単に不勉強にすぎない。

パウエル氏は「早ければ次回9月の会合で政策金利の引き下げが選択肢となり得る」とも述べた。短期金融市場では当然のことながら、9月会合での0・5%の利下げが織り込まれつつある。

問題は、これで十分かどうかだ。今の政策金利は5・5%だが、米国経済の巡航金利と思われる4%程度より高い。FRBが見通しで示しているように引き下げは周知の事実だが、いつやるかがポイントだ。筆者は、7月31日のFOMCで0・5%の引き下げをしてもよかったと思っている。今後の経済状況によっては0・75%くらいの引き下げが必要になるかもしれない。

または、これまで2024年は「9月か12月に1回利下げ」というシナリオが有力だったが、「2回利下げ」というシナリオも出てくるだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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