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マネー秘宝館 先行き不透明だからこそ、格闘技も商売も「手数」を出そう 大きな投資は避け小さく機敏に「ヒットアンドアウェー作戦」のススメ

zakzak by夕刊フジ / 2024年7月10日 15時30分

野球ファンでにぎわう東京ドームのすぐ横に後楽園ホールがあります。そこはボクシングやプロレスなど格闘技の殿堂。私もよく行きますが、生で見る格闘技は迫力が違いますねえ。何がいいって、セコンドから飛ぶ選手への指示。「動け、動け」、「前、前」、パンチが少しでも当たったら「効いてる効いてる」「嫌がっているぞ」。

そして多いのが「手数(てかず)出せ、手数!」。これを聞いていると、まるで自分に言われているような気持ちになります。いまのように先行き不透明、顧客に何がウケるか分からないときは、じっとしていないで手数を出すこと。とにかくパンチを打ってみる。それによって何かが変わる。格闘技も商売も、動かないで状況を変えることはできません。

話は変わって東京駅や日本橋界隈。再開発が進行中で、街のあちこちでビルの建設ラッシュ。インバウンドの旅行客も増えており、新たなお店やレストランが続々と誕生しています。そのなかで目立つのが出店したと思ったら、かなり早いタイミングで撤退するお店。

これまで日本の会社は「撤退」を苦手としてきました。赤字であっても「伝統の事業」からなかなか撤退ができません。そのような会社ではよく「先々代の○○社長が始めた事業だから」という話が聞かれます。このような「ご先祖の名前」が登場するとだいたいダメですね、撤退の意思決定ができない。

あと撤退できない大きな理由が「がんばりすぎ」。その事業の責任者が「自分の力不足で撤退した」と言われることを恐れ、なんとか黒字化しようと引っ張ってしまう。そのようなケースを多々目にしました。

しかしながら、最近の店舗をみると、かなり撤退が早いです。おそらくご先祖の名前やがんばりといった「情」を抜きにして、「数字」による撤退基準を明確に定めているのだと思います。「この時期までにこの金額を達成できなければ撤退」という風に。

このように「明確な撤退基準」を設定することは、そのお店で働く従業員からすれば「良いこと」かもしれません。その店が閉店になっても別のお店で働けるのであれば心新たなチャレンジができます。むしろお気の毒なのは、儲からないお店で低いテンション、やる気が起きないままずっと働かされること。赤字事業、衰退がわかっている事業に縛り付けられるのは気がめいります。どうせ働くのであれば「自分のがんばりが儲けにつながる」仕事がいいですよね。

もっとも、儲かるかどうかは「やってみないとわからない」のも事実。だからこそ「多くの手数」を出しつつ、ダメなときはさっと引く。そんなヒットアンドアウェー作戦が増えているのかもしれません。大きな投資は避けて、小さく投資して機敏に動く。店舗経営でもそうなのだから、サービス業はさらに「手数」だと思います。ぐずぐず考えるヒマがあったら動く、一歩前に出てから考える、やれることはすべてやる。そんなファイトで行きましょう!

■田中靖浩(たなか・やすひろ) 公認会計士、作家。三重県四日市市出身。早稲田大学商学部卒業後、外資系コンサルティング会社勤務を経て独立開業。会計・経営・歴史分野の執筆・講師、経営コンサルティングなど堅めの仕事から、落語家・講談師との共演、絵本・児童書を手掛けるなど幅広くポップに活躍中。「会計の世界史」(日本経済新聞出版社)などヒット作多数。

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