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椎名誠の街談巷語 無人AIタクシーと何を話せばいいのだろう…近未来の不思議な世界 抵抗感がある姿なき運転手、夜更けにスッと止まったらゾッと

zakzak by夕刊フジ / 2024年8月23日 11時0分

透明人間? 都会の怪談? 近未来は、無人のタクシーが待つ光景も当たり前になるのだろうか?(夕刊フジ)

AI(電子頭脳)の運転する実験タクシーに乗ったという人の体験を聞き、スマホで撮ったというその状況を見た。

誰もいないのにゆるやかに動いているハンドル。そのむこうから軽快に流れてくるどこかの風景。おお。むかしアメリカの映画で透明人間がクルマを運転しているシーンとしてこんなのを見た記憶がある。むかしは撮影するのがたいへんだったでしょうなあ。そうとう複雑かつ面倒な仕掛けをしなければ撮れなかった世界だから。

でも、かなりヘンな風景だ。そもそもニンゲンはこういうコトをしちゃあいけないんじゃあないのかね、と即座に思いましたよ。

夜更けの通りでタクシーを待っていると、こういうのが横にきてスッと止まったとしたらそうとう気持悪いでしょうなあ。

誰も乗っていないそのクルマのなかから声だけが聞こえてくるんでしょうかね。

「へい、お待ち!」かなあ。

エート、タクシーの運転手と乗客が最初にかわす言葉ってなんでしたっけかねえ。今のタクシーからはあまり愛想のいい声が聞かれないような気がする。

「どちらまで?」

そんな丁寧な言葉はまず聞かない。思いだした。最近のあの人たち、まずは簡単には喋らないんだ。喋るのは乗る客のほうが先になっているような気がする。

ならば雨のしょぼ降る深夜に一回ぐらい、

「青山墓地まで行っていただけますか?」などとフルエルような声で言いたかったなあ。本当に連れて行かれると困るんだけれど。

AIの運転するタクシーに抵抗感があるのは、その姿なき運転手とはまだそれほど親しくないからなんだろうなと思いますな。

そいつの運転歴とか趣味とか目下の政治に対する考え方とか、酒はやるほうなのかとか、まあ「そこそこですかね」なんて答えられたりされるとちょっと考えたりして。

「もっとも飲むのは仕事をハネてからですがね」なんてとりつくろわれたりして。

「ふだんはもっぱらガスをやってるから、たまーに濃いハイオクガソリンを七、八リッターほどグイグイとやりたくなりますねえ」なんて答えられたりしたらちょっとあとずさりますがねえ。

今後無人AI車がじゃんじゃん増えていったりすると世の中いろいろ変わっていくんでしょうなあ。

夜更けの高速道路を運転していてフト気がつくとまわりを走っている殆どのクルマの運転席に運転手の姿が見えない、なんていう状態になったら注意する必要があります。おそらくAI車にはいろんな防護防衛装置が施してあるのだろうけれど、なにかおきたときにどのくらい責任をとってくれるのか。

そうだ、真夜中の一本道をフラフラやってきたやさぐれAI車とどう対応したらいいか、まだ未解決でしたなあ。

■椎名誠(しいな・まこと) 1944年東京都生まれ。作家。著書多数。最新刊は、『続 失踪願望。 さらば友よ編』(集英社)、『サヨナラどーだ!の雑魚釣り隊』(小学館)、『机の上の動物園』(産業編集センター)、『おなかがすいたハラペコだ。④月夜にはねるフライパン』(新日本出版社)。公式インターネットミュージアム「椎名誠 旅する文学館」はhttps://www.shiina-tabi-bungakukan.com

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