深層韓国 韓国バッテリー業界の憂鬱「枯死しかねない」 社運賭けた大投資もEV売れ行き鈍化、中国の安価なバッテリーにたたかれ業績不振
zakzak by夕刊フジ / 2024年7月19日 6時30分
「もうかる物には社運を賭けて大投資をしてこそ、世界のトップ企業にのし上がれる」
サムスン電子がDRAM(記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリー)半導体で成功して以来、韓国の大手財閥オーナーたちは、こうした信念に固まったようだ。EV(電気自動車)搭載用のバッテリーが「社運を賭けた大投資」の絶対の標的になった。
韓国のバッテリー業界は膨大な投資を続けているが、EVの売れ行きが鈍り、中国の安価なバッテリーにたたかれ、目を覆うべくもない業績不振に。バッテリーは「韓国の先制ホームラン」どころか、「韓国経済の危うさを示す表示灯」になった。
LGエネルギーソリューション、サムスンSDI、SKオンという、電池大手3社がそろって業績不振とあって韓国紙は保守系紙も左翼紙も、このところ「韓国バッテリー業界の危機」を大きく伝えている。
中でも毎日経済新聞(7月1日)のSKに関する報道は衝撃的だった。「SKバッテリー事業、背水の陣」「社長級を2桁飛ばしたSKオン」「10四半期連続赤字」の3本立て。
「10四半期連続赤字」の記事に出てくる数字を見ただけで目がくらむ。数字の部分だけ抜粋しよう。
▽今年、ユーロ債5億ドル(約6800億ウォン)、韓国ウォン会社債3000億ウォンを発行。
▽最近、新型資本証券(資本金に算入計算できる永久債)を発行して5000億ウォンの資金を6・424%の金利で調達。
▽連結基準の純借入金は21年末2兆9046億ウォン、24年3月期には15兆5917億ウォンに急増。
▽業界によると、24年3月期の米国工場の稼働率は10%余。
▽北米地域の生産能力は現在22GWh(ギガワットアワー)、25年には139GWhに拡大。
SK財閥は、複数の優良子会社とSKオンを異種合併させることで、バッテリー事業の財務指数を好転させるようだ。
しかし、バッテリーの売れ行きは変わらない。肝心のEVの売れ行きが鈍る一方、中国市場には価格の問題で参入できないからだ。
さらに現代自動車グループがバッテリーの自社開発を公然化させ、4月には現代モービスがスペインで工場建設を開始した。インド向けEVにはインド製のバッテリーを搭載する、つまり3社の製品は使わない方針も明らかにした。
3社のたたき合いから4社の争いになるのだろう。
大手3社は申し合わせたように「一時的な需要の減退は26年で終わる」と述べているが、そうなるかどうか。
保守系紙の東亜日報(7月11日社説)は「Kバッテリー」の先行きについて「このままでは枯死しかねない」と憂慮を表明している。
(室谷克実)
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