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お金は知っている 自民党総裁選に抜け落ちた「円安」生かす視点 デフレ克服に必要な大幅賃上げの継続には欠かせない 次期政権は利上げに待ったを

zakzak by夕刊フジ / 2024年9月20日 15時30分

(夕刊フジ)

事実上、ポスト岸田文雄首相を選ぶことになる自民党総裁選まであと1週間余り。9人の候補の経済政策は、アベノミクス継承、反アベノミクス、それらの折衷に分類できるのだが、これまでの論戦では肝心な点がぽっかりと抜け落ちている。「円安」である。

グラフは国内総生産(GDP)の名目及び実質額と円ドル相場について、アベノミクスが本格化した2013年度以降の推移である。安倍氏が首相から降りたあと、菅義偉、岸田文雄各政権と続いたが、いずれもアベノミクスの大筋を引き継いだ。一目瞭然、2020年度以降、円安と名目GDPは寄り添うように動いている。円安すなわち名目GDP増という関係が鮮明になっている。

13年度から24年度4~6月期まで、統計学上の相関係数(最大値は1)を算出すると、0・85で、1995年度以降に広げても0・81と相関度は極めて高い。円安で名目GDPは増え、円高で縮小する傾向がみてとれる。日本経済は平成バブル崩壊後の1990年代後半から慢性デフレ、つまり「失われた30年」に陥り、いまだにデフレ局面から脱出仕切れていない。

だが、21年度以降、円安とともに名目GDPが拡大基調に転じてからは脱デフレのチャンスが到来している。先の春闘では連合ベースの賃上げ率は5%台に乗り、今夏はボーナスを含め、勤労者収入上昇率が物価の値上がり率を上回った。日本のデフレは需要が供給能力を下回る「需給ギャップ」が主因であり、内閣府の試算でもこの4~6月期でも需要不足の状況にある。従ってデフレ圧力は依然として根強いと見るべきだ。

需給ギャップを克服するためには大幅賃上げの継続が鍵になる。そこで欠かせないのは円安の持続である。22年以降の急速な円安は輸出企業の収益を大きく増やすばかりではない。輸入コストの急激な上昇は業種も、大企業も中小零細企業も問わず、産業界全体のデフレ心理を劇的に転換させ、コスト上昇分を販売価格に転嫁する値上げ機運を普及させた。すると企業の名目の売上高が増え、収益もかさ上げされる。名目収入増の見通しが立つと、経営者は賃上げ要求に応じるようになった。

ところが、メディアや政治家の多く、さらには日銀も「円安悪者」説に傾いている。円安によるコスト上昇は家計や中小企業を苦しめるのでとんでもない、というわけで、一見するともっともらしい。だが、よくよく考えてみると、円安の分だけ物価が上がると同時に賃金など所得が増えれば全く問題はない。それがかくも長き間、できなかったのは需要を弱くしてきた政府の財政政策のせいだ。

アベノミクスの柱である日銀の異次元金融緩和は円安を誘導し、輸出企業の収益を増やしたが、2度に渡る大型消費税増税によって家計消費を萎縮させるという誤りをおかした。次期政権は日銀の利上げに待ったをかけて円安水準の維持を図る。財政では消費税減税を考えるべきなのだ。 (産経新聞特別記者)

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