大人のエンタメ アクションよりも人間ドラマが見せ場 新しい流れが垣間見える欧州の戦争映画 5日公開「潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断」
zakzak by夕刊フジ / 2024年7月4日 6時30分
2023年ベネチア国際映画祭のオープニングで上映され、話題となったイタリア・ベルギーの合作映画「潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断」が5日、公開される。戦時下においても、決して失われることのない海の男たちの誇りと絆を、事実に基づいて描いた戦争映画だ。
1940年10月、イタリアの潜水艦「コマンダンテ・カッペリーニ」は航海中、船籍不明の貨物船が装備していた艦砲で攻撃してくるのでやむなく反撃し撃沈する。だが、それは中立国であるはずのベルギー船だった。海にほうり出された貨物船の乗組員を救助するか否かで、潜水艦艦長(ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ)は逡巡する。艦内が狭いためベルギー人を収容するだけのスペースがなく、艦橋(司令塔の外側)に乗せれば、潜航できなくなってしまう。艦長はそうした危険性を承知の上で、貨物船の乗組員を助ける決断を下すが、英軍の支配海域を無防備状態で航行しなければならなくなった。先行きの見えない展開に、サスペンスがじりじりと高まっていく。ハリウッド製戦争映画と違い、アクションよりも人間ドラマのほうが見せ場となっているのだ。
潜水艦コマンダンテ・カッペリーニは、イタリア降伏後、日本海軍に接収され、伊号潜水艦となって活躍し、日本降伏後に、米軍によって紀伊水道で海没処理された。映画にはその数奇な運命は映像化されていないが、その経歴を象徴する場面が出てくるのでご注目を。
ベルギー貨物船の乗組員を助けるくだりでは、明治天皇と日露戦争の話がいきなり語られる。これは敵を打ち負かすうえでは果敢に戦うが、戦闘能力を失った敵の命は尊重する軍人の心構えを、日本人から学ぶことを意味しているが、前述した同艦の歴史を念頭に置けば分かりやすいか。
実話だけが語り伝える真実の戦争ドラマであり、ヨーロッパ戦争映画の新しい流れが垣間見える。ぜひ見逃さないでほしい。 (瀬戸川宗太)
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