渡邉寧久の得するエンタメ見聞録 今聞くべき講談師・神田愛山 ソニー「来福」がCD化 神田伯山が一門の「おじ」として慕い教えを乞う人物
zakzak by夕刊フジ / 2024年6月9日 10時0分
ここ数年、聞き逃していたことを恥じた演芸人が2人いる。1人は落語家のむかし家今松(78)、もう1人は講談師の神田愛山(70)だ。
コロナ禍の寄席に鈴本演芸場の鈴木敦席亭が今松を積極的に顔付けし、そのよさを観客に再発見させた。以来、今松の出番は多い。
根強いファンに支えられてきた愛山の芸に目をつけたのは、ソニー・ミュージック落語レーベル「来福」だ。先ごろCD「神田愛山 講談集」を発売した。これまで、古今亭志ん朝や柳家小三治、人間国宝・五街道雲助らの芸をCDで残してきた「来福」が、愛山の芸を残したのである。
人気講談師・神田伯山(41)が一門の「おじ」として慕い、教えを乞う人物。「20代の中ほどからアルコール依存症という病に取りつかれて、31歳で(酒を)やめるまでどん底でした」という地獄を見た男。依存症から脱却したころの高座が、私の最初の愛山体験だった。別の依存症に悩む方と魂を寄せ合い、私鉄沿線の自宅で講談会を開いていた頃の古い話だ。
今年芸歴50年。「古希と芸歴50年がぴったり重なりました。こんな無名の男のCDが売れるのか。現実感がない。人生のけじめというか置き土産」と、愛山ははしゃがない。
収録演目は「寛政力士伝~谷風の情け相撲~」と「敵討母子連れ」(原作・菊池寛)。「敵討~」は、「古本祭りで見つけ、たまたま読み始め、結末に衝撃を受けて講談にした」という愛山オリジナル。
「講談はダンディズム」と愛山は唱える。ダンディズムを構成するのは「敗者の美学」「自己犠牲」「散り際の美しさ」の三要素で、「敵討~」にはそれが凝縮されているという。
美学に感動した落語家の柳家喬太郎(60)に自分の会でやってほしい、とリクエストされたことがある。CDのライナーノーツでは演芸研究家の瀧口雅仁氏が「講談美に浸ることのできる愛山代表作である」と太鼓判を押す。
今週、CD発売を記念した「神田愛山芸道五十周年三夜連続独演会」が東京・内幸町ホールで行われ、連日満席。今月30日には、東京・イイノホールで「神田愛山→神田伯山『相伝の会』」が開かれる。
今、愛山を聞き逃せない。 (演芸評論家・エンタメライター)
■渡邉寧久(わたなべ・ねいきゅう) 新聞記者、民放ウェブサイト芸能デスクを経て演芸評論家・エンタメライターに。文化庁芸術選奨、浅草芸能大賞などの選考委員を歴任。東京都台東区主催「江戸まちたいとう芸楽祭」(ビートたけし名誉顧問)の委員長を務める。
この記事に関連するニュース
-
落語動画サブスク「ぴあ落語ざんまい」6月の新着ラインアップ
PR TIMES / 2024年6月18日 23時40分
-
「仲ようしなはれや」希代の人情家、桂ざこばさん急死 師弟の絆、一門の絆を基本に ケンカ別れしていた立川談志さんに力説も
zakzak by夕刊フジ / 2024年6月16日 10時0分
-
桂ざこばさん 横山やすしさんに「どんどん謹慎して」 皆に愛された“忖度なし”素顔
東スポWEB / 2024年6月13日 5時10分
-
桂ざこばさん死去 松竹芸能の噺家仲間からも悲しみの声 上方落語をけん引
スポニチアネックス / 2024年6月12日 17時48分
-
3年前に皮膚がんを患った講談師・神田松鯉さん81歳「長生きの秘訣は社会参加」【私が生きるクスリ】
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年5月26日 9時26分
ランキング
-
1「嫌なら自分で買え」木南晴夏、舞台挨拶での“ロケ弁クレーム”に批判の声
週刊女性PRIME / 2024年6月22日 11時30分
-
2粗品に続き鈴木おさむも…“キムタクいじり”が止まらないのは事務所の力が弱まったから?
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年6月22日 9時26分
-
3「気持ち悪い」芳根京子、“父の日限定”ビールCMが“願望を押し付けるな”の総スカン
週刊女性PRIME / 2024年6月18日 21時0分
-
4「家バレする」「完全に自爆」伊勢谷友介、物議の“路上スケボー”動画に映っていたモノ
週刊女性PRIME / 2024年6月22日 7時0分
-
5「テカテカ」宮沢りえの“近影イジり”にファン猛反論「年相応の姿が素敵」追求するナチュラルな美しさ
週刊女性PRIME / 2024年6月22日 16時30分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください