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兼原信克 安倍総理の遺産 米国で「中距離海洋核の復活」が議論 日本は核搭載艦船の寄港認める必要 非核三原則の1つを「打ち込まさせず」に修正を

zakzak by夕刊フジ / 2024年7月3日 11時0分

安倍元首相は夕刊フジの連載「日本の誇り」で「核抑止の議論」を訴えた=2022年3月11日発行(夕刊フジ)

「米中核対峙(たいじ)の時代」が、すぐに到来しようとしている。戦後80年の「核のタブー」を破って、核兵器問題を初めて国政の場に持ち出したのは、安倍晋三元首相だった。退任後、安倍氏は、米国との「核シェアリングの問題」について、議論し始めなくてはならないと熱弁を振るった。残念ながら、安倍氏が凶弾に倒れた後、この問題は水をかぶった炭火のように消えてしまった。

日本は核不拡散条約(NPT)締約国である。60年代、中国とフランスが核実験に成功すると、それまでに核兵器国となっていた米国と英国、ロシアを合わせた5カ国で、「核保有国を国連安保理常任理事国に限定しよう」という動きが出た。それ以外の国には、厳しい国際査察の下で原子力の平和利用だけを認めようというのがNPT条約である。

特に、「敗戦国であるドイツと日本には核保有を認めない」という旧連合国の思惑が透けて見えた。

自民党の若手からは激しい反発が出た。米国は、日本をなだめようとして、「核の傘の提供」を公言するようになった。ドイツは、米国を完全には信用しなかった。既に、ドイツ国内には大量の戦術核が持ち込まれていた。ドイツは、その運用に一枚嚙ませろと言い募った。その結果、生まれたのが「NATO核」である。

ところが、日本政府は、核の問題に沈黙し続けた。佐藤栄作首相(当時)が「非核三原則」を唱えてノーベル平和賞を受賞したが、「どうやってロシアや中国の核攻撃を阻止するか」という議論は全くなされなかった。

今、米国では、米中核対峙の時代に備えて、「中距離海洋核の復活」が議論の俎上(そじょう)に上っている。ドナルド・トランプ前大統領が認め、その後、ジョー・バイデン大統領が拒否しているからである。

中距離核に関しては、中国と米国の間に顕著なミサイル・ギャップがある。日本に核が打ちこまれても、米国は空中発射の中距離核しか持たない。あるいは、カリフォルニア沖の戦術核搭載トライデント・ミサイルしかない。しかし、大陸間弾道弾であるトライデント・ミサイルの使用は全面核戦争への発展の危険が伴う。中距離海洋核の復活は理にかなっている。

そうなれば、米攻撃型原潜に再び中距離核ミサイルが搭載される。その時、日本は、核搭載艦船の日本寄港を正面から認める必要がある。日本に核攻撃させないためである。

佐藤氏のつくった、核兵器を「作らず、持たず、持ち込ませず」の非核三原則は、今こそ、「作らず、持たず、(日本に)打ち込まさせず」の能動的な3原則に修正する必要がある。

■兼原信克(かねはら・のぶかつ) 1959年、山口県生まれ。81年に東大法学部を卒業し、外務省入省。北米局日米安全保障条約課長、総合外交政策局総務課長、国際法局長などを歴任。第2次安倍晋三政権で、内閣官房副長官補(外政担当)、国家安全保障局次長を務める。19年退官。現在、同志社大学特別客員教授。15年、フランス政府よりレジオン・ドヌール勲章受勲。著書・共著に『日本人のための安全保障入門』(日本経済新聞出版)、『君たち、中国に勝てるのか』(産経新聞出版)、『国家の総力』(新潮新書)など多数。

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