ニュース裏表 峯村健司 不気味、中国軍の「ステルス」演習 思い出す軍幹部の「敵の意表を突く奇襲こそ毛沢東同志以来の伝統」台湾や東シナ海に90隻集結
zakzak by夕刊フジ / 2024年12月14日 10時0分
中国が90隻以上の艦艇を日本の南西諸島から台湾、フィリピンを結ぶ「第1列島線」周辺に集結させている、と台湾の中央通信社が10日、安全保障当局者の話として報じた。
事実ならば、1996年の台湾海峡危機以来、最大規模となる。こうした事実を台湾国防部(国防省に相当)も確認したうえで、中国軍で台湾方面を管轄する東部戦区だけでなく、北部戦区や南部戦区の部隊も大規模に展開していることも明らかにした。
筆者はさっそく、船舶自動識別装置(AIS)の情報を元に、中国軍の船舶の位置を調べた。台湾海峡や東シナ海一帯に中国軍の艦艇や海警局(海上保安庁に相当)の監視船が展開していることが分かる。
一方、軍港がある山東省青島や浙江省舟山などの周辺には船舶がほとんどおらず、もぬけの殻となっていた。相当数の艦艇が出航していたことがうかがえる。
監視船の「臨検」訓練も
どのような演習が行われているのだろうか。中国軍の動向に詳しい台湾軍関係者は言う。
「軍艦は米軍や自衛隊の艦艇を攻撃する訓練をしていたようだ。海警局の訓練は台湾を出入りする外国船籍への監視船による『臨検』を想定した内容だったとみている。いずれも実戦に近い内容といえる」
本稿でも解説したように、習近平政権は台湾周辺における軍事演習に加え、監視船による「臨検」を実施することで、台湾の物流を遮断してエネルギーや食料不足に陥らせる「新型統一戦争」を準備している。すでに5月と10月に「連合利剣」と名付けた、台湾周辺を封鎖する軍事演習を実施している。
台湾の頼清徳総統が11月30日から1週間、3つの太平洋島嶼(とうしょ)国を訪問した際、「経由地」として米ハワイや米領グアムにも立ち寄り、米下院議長や上院議員らと電話やオンライン会議をした。
これに対し、中国外務省は「断固とした強力な措置をとる」と反発していたことから、今年3度目となる大規模演習が実施される、と筆者は予測していた。
ところが、中国側からは演習に関する発表がない。国防部や外交部の会見でも、当局者は沈黙を貫いている。これまで中国軍は、演習を実施するときにはほぼ公表してきた。演習の目的は相手国を威嚇したり報復をしたりする政治的な動機があるからだ。
今回は規模が大きいにもかかわらず公表をしていない、いわば「ステルス演習」の可能性が高いとみている。一連の演習を調査しながら、筆者が北京特派員をしていた2008年に取材をした中国軍幹部が発した言葉を思い出した。
「わが軍は本気で戦争をするときには、静かに、そして素早く攻撃をする。敵の意表を突く奇襲こそが、毛沢東同志以来の伝統なのだ」 (キヤノングローバル戦略研究所主任研究員 峯村健司)
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