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元文春エース記者 竜太郎が見た! 渡辺恒雄さんの取材で見えた〝意外な人間性〟 読売新聞幹部「鳥好きのおじいちゃん」、生涯浮気は皆無、愛妻家の一面も

zakzak by夕刊フジ / 2024年12月24日 11時0分

渡辺氏は日本で一番取材を受けた新聞記者かもしれない(夕刊フジ)

「新聞記者は決して尊敬できない人が相手でも、尊敬しているかのように振る舞って取材しなくてはいけない場面もある。それがこの職業のつらいところであり、記者という職業の悪い側面とも言えるな」

12月19日、読売新聞グループ本社の渡辺恒雄代表取締役主筆が98歳で死去した。

冒頭の言葉は2年前、「文藝春秋」のインタビューでスクープの秘訣などを語った一節だが、経験に基づいた含蓄があり、ジャーナリズムを考えるうえで筆者も大いに共感と学びがあった。

巨人軍オーナー、政界のフィクサー、オールドメディアの首領(ドン)として知られた渡辺氏。本人は「ナベツネ」と呼ばれることを嫌っており、記者時代は「ワタツネ」と呼ばれていたという。

「ナベツネ」には「悪者」イメージがついてまわる。特に日本プロ野球選手会のストライキをめぐる「たかが選手」発言で、野球ファンを中心に世間から「野球界の独裁者」と猛反発を招いた。

しかも政治記者だった渡辺氏は中曽根康弘元首相と昵懇(じっこん)で、歴代総理が相談しに行くほどの影の権力者だった。ふてぶてしい面構えで世間の非難をものともしないアクの強いキャラは、恰好のヒール扱いで、いしいひさいちの漫画でもよくネタになっていた。しかし以前筆者が取材すると、意外な人間性が見えた。

「面倒見がいいですし、主筆は部下からすごく好かれていました。会社では資料を読んだり原稿を執筆したり。中庭に出て、ひとりで鳩に餌をあげているのを見かけますけど、〝鳥好きのおじいちゃん〟という感じでした」(読売新聞幹部)

愛鳥家の渡辺氏は、自宅で九官鳥を飼っていたときはよく話しかけ、わが子のようにかわいがっていたという。その九官鳥を狙うカラスを撃退するため、勢い余ってベランダから落下して骨折したことも。

「小沢一郎氏も無類の鳥好きですけど、どちらも孤独そうで、なぜか似たようなタイプに思える」(政治部記者)

また渡辺氏は劇団女優の夫人と結婚して以来、生涯浮気は皆無。晩年は認知症を患った妻を介抱し、キスやハグを日常にしていた愛妻家の一面もあった。

東京大学哲学科卒のインテリで、戦後は共産党員として活動。読売新聞入社後は保守・右派の論調に転じたが、自身の戦争体験から終生「戦争、絶対反対」を唱えた論客であった。

カントやニーチェなどの哲学書、ドレイクの詩集を愛する読書家でもあり、自身の最期にはベートーベンをかけてほしいと願ったクラシック通。多方面で該博な知識は周囲を魅了した。

「もう一度生まれ変わるとしたら、新聞記者をやりたい。もう一度駆け出しから現場の記者をやりたい」

最晩年にこう語った渡辺氏が、世間の悪評とは裏腹に、筆者には愛すべき人のように思えたのだった。合掌。

■中村竜太郎(なかむら・りゅうたろう) ジャーナリスト。1964年1月19日生まれ。大学卒業後、会社員を経て、95年から文藝春秋「週刊文春」編集部で勤務。NHKプロデューサーの巨額横領事件やASKAの薬物疑惑など数多くのスクープを飛ばし、「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」の大賞受賞は3回と歴代最多。2014年末に独立。16年に著書「スクープ! 週刊文春エース記者の取材メモ」(文藝春秋)を出版。現在、「news イット!」(フジテレビ系)の金曜コメンテーターとして出演中。

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