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渡邉寧久の得するエンタメ見聞録 公開は1993年…今もって〝未来感〟クレイジーなスクリーンが癖になるSF傑作 映画「アクション・ミュタンテ 4K」

zakzak by夕刊フジ / 2024年8月19日 11時0分

公開年は1993年。30年後の未来である現時点から振り返っても、まったく古さを感じることなく、今もって〝未来感〟を味わえる。今月23日、4Kで公開されるのが「アクション・ミュタンテ 4K」(アレックス・デ・ラ・イグレシア監督)。スペインの巨匠のデビュー作で、血しぶき殺人やバイオレンス、ブラックユーモアなどがごった煮状態になったSF傑作だ。

どうにでも解釈できて、生半可な解釈を笑い飛ばすようにクレイジーさに満ちあふれたスクリーン。常に何かを見落としているのではないかという不安を抱かせるほど、装置や美術がアートとして凝縮され、詰め込まれている。

時代は近未来。美しさが何よりも優先され、富裕層が美容に励む世界。「アクション・ミュタンテ」は7人組のテロリスト集団でこれまで迫害や虐待を受け続けてきた。社会に一泡吹かせようとテロ行為を続けるが、標的は美男美女、健康や美容に関する機関、精子バンクといった風変わりな相手ばかり。ある日、刑務所から出所したボス、ラモンを迎えたテロ集団は、パンメーカーの大富豪の美しい娘、パトリシアの誘拐を計画する。

ケーキ職人になりすまし、結婚式場に潜入する。そこで列席者を容赦なく機関銃の餌食にして、まんまとパトリシアの誘拐に成功するが、身代金の引き換え場所に指定された惑星に宇宙船で到着するという摩訶(まか)不思議な展開に。置いてけぼりを食わないように心してかからなければならない。

目印の木にはほとんど骨だけの死体がくくり付けられ、惑星にはセックスに飢えた小太り一家が待ち構え、身代金の引き渡し場所に指定されたバーでは壮絶な銃撃戦が繰り広げられるが、それぞれの画面に込められた美学が、美しい悪趣味の束となり襲ってくる。

わい雑で血も涙もないほど攻撃的で、騒乱状態の筋運びが続くが、見終わった瞬間考えたことは、もう一度見よう、だった。

テロ集団の秘密基地、アジトの細部を秒送りで見たい。血に染まったウエディングドレス姿の人質が犯人側にシンパシーを抱くようになる過程や扇情的なテレビカメラの滑稽さなど、ごった煮のスープを堪能するには、上映時間95分だけではもの足りない。 (演芸評論家・エンタメライター)

■渡邉寧久(わたなべ・ねいきゅう) 新聞記者、民放ウェブサイト芸能デスクを経て演芸評論家・エンタメライターに。文化庁芸術選奨、浅草芸能大賞などの選考委員を歴任。東京都台東区主催「江戸まちたいとう芸楽祭」(ビートたけし名誉顧問)の委員長を務める。

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