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山上信吾 日本外交の劣化 「もしトラ」忌避に違和感 米国を〝ヨイショ〟する岸田首相の演説に心底がっかり 今こそ「物申す日本」打ち出すとき 

zakzak by夕刊フジ / 2024年7月24日 6時30分

岸田首相(夕刊フジ)

「もしトラ」を心配する議論が、日本の論壇をにぎわしている。いささか違和感を覚えるのは、これら論者の多くがドナルド・トランプ前大統領再登板への忌避感を口にするからだ。

果たして、在韓米軍撤退論を引き下げてホワイトハウス入りしたジミー・カーター元大統領や、北朝鮮への「戦略的忍耐」を訴えて何もしなかったバラク・オバマ元大統領の登場にあたり、この人たちがどんな論陣を張ったのか、検証してもらいたいものだ。

個人的好悪の感情は脇に置き、米国の民主的手続きを通じて選ばれる大統領と信頼関係を築き上げて日本の国益実現を図る基本姿勢こそ、肝心だ。

ジョー・バイデン米大統領、日本の岸田文雄首相、英国のキア・スターマー首相、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、ドイツのオラフ・ショルツ首相、カナダのジャスティン・トルドー首相、オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相。

習近平国家主席の中国から見れば、いずれも「御しやすい弱いリーダー」が連なっている不幸。そこにこそ、トランプ氏の価値があろう。

「『台湾を見捨てた弱い大統領』として歴史に名を残すことがあってよいのですか?」とささやき、米国の力を抑止力強化、そして万が一にも抑止が崩れた場合の危機対処能力向上のために役立てるのは、日本の首相の使命ではないか?

だが、果たして、そうした芸当が今の首相にできるのか? そこが問題だ。

安倍晋三政権時代、台湾海峡での中国による武力行使をいさめることのなかったトランプ氏。同盟国からの鉄、アルミ製品の輸入に対してさえ、安全保障理由で関税を上乗せしたトランプ氏。

拙著『日本外交の劣化 再生への道』(文藝春秋)で詳述したとおり、あれだけ首脳間の信頼関係をトランプ氏と打ち立てることに成功しながらも、これらの点で安倍氏は強く申し入れることはなかった。

そして、岸田首相。米国議会で英語で講演した程度で、褒めそやす時代は卒業しよう。韓国だって、フィリピンだってやっている。要は訴える中身だ。

その点で、「自由と民主主義」を支えてきた米国をヨイショするだけで、何ら注文を付けることのなかった演説には心底、がっかりした。台湾海峡の「た」の字さえ発することのなかった腰の引けた内容だ。

中国が相手方の能力を過小評価して冒険主義に訴えないよう、抑止力を発揮させる。そして、抑止力が崩れた場合、米国のいち早い駆け付けと関与を確保する。これこそが、あの演説の主眼であるべきだった。

「米国にノーと言えない日本」が続いているのか?

対米交渉最前線で砂をかむ思いをしてきた私としては、情けない限りだ。来年は大東亜戦争終戦80周年。すでに4世代分もの時間がたった。そろそろ、「物申す日本」を打ち出していこうではありませんか!

■山上信吾(やまがみ・しんご) 外交評論家。1961年、東京都生まれ。東大法学部卒業後、84年に外務省入省。北米二課長、条約課長、在英日本大使館公使。国際法局審議官、総合外交政策局審議官、国際情報統括官、経済局長、駐オーストラリア大使などを歴任し、2023年末に退官。現在はTMI総合法律事務所特別顧問などを務めつつ、外交評論活動を展開中。著書に『南半球便り』(文藝春秋企画出版)、『中国「戦狼外交」と闘う』(文春新書)、『日本外交の劣化 再生への道』(文藝春秋)。

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