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実録・人間劇場 アジア回遊編~インド・ネパール(22)闇があまりに深すぎる…客引きのバイクで売春ゾーンに潜入 金切り声でヒジュラーが近づいてきた

zakzak by夕刊フジ / 2024年7月19日 11時0分

ヒジュラーが売春をしている通り=ネパール・カトマンズ(夕刊フジ)

バックパッカー旅に長距離バスは付きものである。チケット代は航空券よりはるかに安いし、何より移動そのものが旅のコンテンツになるからである。しかし、ネパールではもう長距離バスに乗りたくない。険しい山岳地帯かつ劣悪な道路状況から、目的地へ無事にたどり着くだけでも運の良さが求められるのだ。

首都カトマンズから中部ポカラへは途中で橋の陥没といったトラブルに見舞われ、30時間近くもかかってしまった。ポカラからカトマンズへの帰路は交通費を惜しみながらも飛行機でひとっ飛び。わずか25分で到着してしまうと、さすがにあの30時間が無駄に思えてくる。

夜、カトマンズのタメル地区を歩いていると、客引きのネパール人男性が下品な笑みを浮かべながらすり寄ってきた。

「おい、今夜、ジキジキはどうだ?」

買春の誘いである。ネパールおよびインドにおける売春・買春を取り巻く環境は、闇があまりにも深すぎる。性欲旺盛な若い男子でも、少し調べれば行く気がうせてしまうだろう。もっとも、「むしろ行ってみたい」と思う歪んだ性癖を持つ人もいるかもしれないが…。

「ヒジュラーが売春している場所があれば連れて行ってほしい」

そう客引きに伝えると、数秒の間を置き、「OK」と了承してくれた。ヒジュラーとはネパールやインドなど南アジアの地域における第3の性。トランスジェンダーである。

ヒジュラーと言えば、この連載でも以前記したように私には苦い思い出がある。インドを走る列車に乗ってまったりとチャイを飲んでいただけなのに、停車駅でホームから乗り込んできたヒジュラーたちに金を巻き上げられた。丁重にお断りすると、千切れそうになるくらい耳を引っ張り上げられたのである。はたして、ネパールのヒジュラーはインドと同じく、一部凶暴な人たちもいるのだろうか。ふと検証してみたくなったのだ。

客引きのバイクの後部座席にまたがり、タメル地区を走ること約2分。人通りの少ないエリアに出ると、道端にポツポツと人が立っている。バイクでゆっくりと通ってみると、彼女たちは客引きに話しかけてくる。

「後ろに乗っているのは客か?」とでも聞いているのだろう。その声からするに予想はついたが、客引きいわく、ここがヒジュラーたちの売春ゾーンだという。私はおもむろにカバンから一眼レフを取り出すと、客引きに小声で叱責された。

「No photo! 何されるかわからないから、マジで止めてくれ!」

客引きの切迫した表情からバレたらどうなるかは何となく想像がついた。すでに金切り声を上げながらヒジュラーが近づいてきている。私が客引きの腰にしがみつくと、バイクは急発進した。

■國友公司(くにとも・こうじ) ルポライター。1992年生まれ。栃木県那須の温泉地で育つ。筑波大学芸術学群在学中からライターとして活動開始。近著「ルポ 歌舞伎町」(彩図社)がスマッシュヒット。

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