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花田紀凱 天下の暴論プラス 年末年始おすすめの本 今年はミステリーの当たり年『両京十五日』『ビリー・サマーズ』『炒飯狙撃手』など

zakzak by夕刊フジ / 2024年12月26日 15時30分

『東京降りたことのない駅』(夕刊フジ)

このコラムも今年の最終回。

で、今年も年末年始におすすめの本、10冊(番号は順位ではありません)。

今年はミステリーの当たり年だった。

①『両京十五日 Ⅰ 凶兆 Ⅱ天命』(馬伯庸 早川書房)

②『ビリー・サマーズ』上下(スティーヴン・キング 文藝春秋)

この2冊は既に紹介したが『週刊文春』などのミステリー・ベストテンでも上位にランキングされた。

まだ読んでいない人はぜひ。

③『炒飯狙撃手』(張國立 ハーパーコリンズ・ジャパン)

イタリア北西部、リグリア湾に面した小さな村で炒飯専門テイクアウトの店をやっている小艾(がい)は実は台湾の潜伏工作員。

ある日、命令を受けローマで1人の東洋人を狙撃。が、村に戻ると、何者かに襲撃され、一転追われる身に。

一方、定年直前の台湾の老刑事老伍は台湾で発生した海軍士官と陸軍士官の連続不審死を追っていた――。2つの事件を結ぶ巨大な陰謀とは。

主人公小艾が折りにつけて作る炒飯が実にうまそう。

④『愚者の街』上下(ロス・トーマス 新潮社)

やや、とっつきにくいのだが、読み了えると改めてこの小説の凄(すご)さがわかる。

元秘密諜報員、ダイが命じられた任務は「街をひとつ腐らせること」。

賭博や買春を黙認し、賄賂を受け取る警察や市の要人たちを次々と排除していく。だが、弱体化した街には各地のマフィアが群がり、凄惨(せいさん)な悪党どもの共喰いが始まる――。

⑤『破れざる旗の下に』(ジェイムズ・リー・バーク 早川書房)

舞台は南北戦争時代の南部ルイジアナ。優勢な北軍、撤退する南軍、奴隷解放を掲げるゲリラ組織が入り乱れていた。

決闘で傷ついた傷痍(しょうい)軍人、叔父の農園主、殺人容疑をかけられた美しき女性奴隷、奴隷廃止論者の女性活動家、梅毒に侵された南軍の大佐……。

悲惨極まるが、感動的な物語。

但し、エピローグには疑問。

以下はミステリー以外。

⑥『東京降りたことのない駅』(本橋信宏 大洋図書)

アンダーグラウンドシリーズや『全裸監督 村西とおる伝』など、本橋さんの本は愛読しているが、これは編集者として「やられた」と思った。

たしかにぼくも、子供の時から東京で生活して多くの私鉄、JRを利用しているが「降りたことのない駅」は少なくない。人間の行動範囲は結構狭いものなのだとこの本で知らされた。

西武新宿線都立家政駅から始まってJR常磐線三河島駅、京成押上線京成立石駅などなど。本橋さんと編集長、カメラマンの3人が、実際に「降りたことのない」駅で降り、周辺の街を歩いてルポする〝小旅行〟。

一仕事終わった後の一杯も楽しそうだ。

⑦『がん征服』(下山進 新潮社)

平均余命15カ月。手術や抗癌剤、放射線治療でも治せない悪性脳腫瘍「膠芽腫」をとっかかりに、原子炉・加速器を使う最新療法、光免疫療法などがん治療の最前線を徹底取材したノンフィクション。

いつもながら下山さんの取材力には頭が下がる。この作品が大宅壮一ノンフィクション賞など、各社ノンフィクション賞の候補にも挙がらないのは疑問。

スペースの関係で、⑧⑨⑩略。 (月刊『Hanada』編集長・花田紀凱)

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