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勝負師たちの系譜 模範対局 藤井聡太名人を恐れぬアマ2人が勝利 プロ棋戦では逆転が多いが…大駒落ちの不利は物量の違いの悪さ

zakzak by夕刊フジ / 2024年10月19日 15時0分

藤井名人に勝利した伊藤大悟さん(右)(夕刊フジ)

地方では将棋ファンのための大会、イベントなどが盛んで、新聞社が主催している事業も多い。

静岡新聞社と山梨日日新聞社は共催で、昭和37年(1962)から時の名人を呼び、県名人と模範対局をして正月の紙面に載せる企画を、60年以上続けている。

今年は10月13日、藤井聡太名人が初の来静となった。昨年は山梨の担当だったが、八冠達成直後ということで、来場希望者が1000人ほどあったという。

そこで静岡では今回、会場を新聞社のホールでなく、大勢入れる日本平ホテルに変更。午前と午後のお客さまを入れ替えた。これで前回よりも3倍以上の来場者を可能にしたが、それでも抽選で外れた人が何百人もいたという。

午前中は遠征してきた、竹内広也山梨県名人(六段)との対局。3年連続で山梨名人を続けている強豪で、手合いは角落。

この模範対局のルールは、飛車落ちから始まり、下手が2勝したら角落に昇格というもの。

竹内さんは渡辺明名人(当時)と昨年の対藤井戦で連勝しているので、今回は角落ちだ。

現代ではトップアマ相手に大駒落ちは、名人といえどかなり厳しいが、昔は(特に大山康晴十五世名人、中原誠十六世名人の時代)下手が全く勝てなかったのである。

この静岡でも17年間、飛車落ちで下手が勝てなかったことがある。最後に勝ったのが、将棋アプリ『将棋ウォーズ』を開発した「HEROZ(ヒーローズ)」の林隆弘代表取締役だったというのも、皮肉な時代だった。

竹内さんは角落でも急いで攻めず、中央を盛り上がって完璧な防御態勢を敷く。上手に無理攻めをさせる、プロのような作戦でうまく勝ち切った。

最後まで大駒落ちの差は埋まらなかったのだ。

続く伊藤大悟静岡県名人(五段)は、竹内さんと同じ3年連続の県名人だが、一昨年に渡辺名人に敗れているので、手合いは飛車落ち。勝てば昇格の一番を、位取りから位で押し倒す作戦に出た。

上手もうまく組み直し、難しい将棋となったが、終盤で寄せ合いに入ると、やはり飛車落ちの差は埋まらず、伊藤さんの勝ちとなった。

プロ棋戦では逆転勝ちの多い藤井名人だが、大駒落ちの不利は物量の違いの悪さなので、アマでもこのレベルの人相手では、逆転しないのだ。

もしかしたらこの2人だけが、現在藤井名人に対して、恐れを持たずに指せるのではないか、とさえ思った対局だった。

■青野照市(あおの・てるいち) 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。

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