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森永康平の経済闘論 税収過去最高なのに苦しい家計 実質賃金、過去最長の連続マイナス 困窮する国民へ政策支援ためらうは〝愚の骨頂〟だ

zakzak by夕刊フジ / 2024年7月18日 6時30分

財務省の外観。税収は過去最高が続いている(夕刊フジ)

一般会計72・1兆円

財務省が公表した資料によると、2023年度の一般会計税収は72・1兆円となり、4年連続で過去最高を記録した。

企業グループの納税方法の変更の影響などもあり、23年度補正予算段階では税収は69・6兆円と22年度の実績を下回ると予想されていた。しかし、いざ蓋を開けてみれば円安の影響で企業の業績が改善し、法人税は前年度より約9000億円多い15・8兆円となった。過去最高だったバブル期の16・5兆円(1991年度)に迫る水準となり、税収全体を押し上げることとなった。また、物価上昇によって名目成長率が押し上げられたことも税収を増加させる要因となっている。

税収が過去最高を更新し続ける一方で、実質賃金のマイナスが過去最長の26カ月連続を記録し、実質消費支出の季節調整値は15カ月連続でマイナスとなっており、家計は非常に厳しい状況が続く。こうなってくると、円安を絶対悪として敵対視する「悪い円安論」が出てきたり、物価高を憎むがあまり「インフレよりもデフレの方がマシ」といった言説が飛び交うようになる。

しかし、物事には必ずメリットとデメリットの両面があり、それは立場によっても見え方が変わってくるものだ。少なくとも税収の観点からすれば、円安と物価上昇は追い風となった。それであれば、円安と物価上昇が逆風となっている家計部門を政策によって支援すべきであろう。

それでは実際にそのような政策が行われているのだろうか。政府は5月使用分で電気・ガス代の負担軽減策を終了した。8月から10月までの3カ月間で再開する方針を決めてはいるが、なぜ気温が上がりクーラーの利用量が増えてくる6月、7月は負担軽減策をとらず、8月から3カ月限定で再開するのか。9月の総裁選をにらんだ政治色の強い方針のように見えてしまう。

そもそも、政策を決める際に政策の規模を財政赤字の金額を基に考えたり、政策を選挙のタイミングに合わせたりすることは愚の骨頂だ。財政赤字であろうが、選挙がしばらくなかろうが、国民が困窮しているのであれば少しでも早く支援をすることが政府の役割であり、それができないのであれば、そもそも政策に携わる資格はない。家計が苦しい中でも過去最高を記録し続ける税収をみて、それでもなお骨太の方針にプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化目標を明記してしまうあたり、つける薬もないように思える。

森永康平(もりなが こうへい) 経済アナリスト。1985年生まれ、運用会社や証券会社で日本の中小型株のアナリストや新興国市場のストラテジストを担当。金融教育ベンチャーのマネネを創業し、CEOを務める。アマチュアで格闘技の試合にも出場している。著書に父、森永卓郎氏との共著『親子ゼニ問答』(角川新書)など。

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