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小林至教授のスポーツ経営学講義 健康産業展「SPORTEC」に目立つ外国企業の出展増加 最先端の技術を持つ米国、韓国…大きく後れをとる日本

zakzak by夕刊フジ / 2024年8月8日 6時30分

「SPORTEC」を視察する筆者=7月、東京ビッグサイト(本人提供)(夕刊フジ)

日本最大のスポーツ・健康産業展「SPORTEC」へ行ってきた。スポーツは時代の空気を映し出す鏡だとよく言われるが、毎年この展示会にいくたびにそのことを実感しており、今年も例外ではなかった。東京ビッグサイトの広大な会場に3日間で3万7611人が来場し、国内外から532のブースが出展された本展示会を歩きながら、スポーツが現代社会のさまざまな課題にどう向き合っているのかを見て、感じたことを少し述べてみたいと思う。

まず、外国企業の出展の増加が目立った。理由のひとつは円安だ。外国企業にとって、世界最大級の都市でありながら移動や宿泊、そして出展コストが諸外国に比べて劇的に低い東京はコスパ抜群だという。しかし、本当の理由はスポーツ産業においても、出展に値する最先端の技術を持っているのが外国企業だからだ。

スマホやタブレットと連動させるウェアラブル・テクノロジーは、フィットネス産業で最も投資が盛んな分野のひとつだが、その最先端の技術を持っているのは米国、韓国、台湾、そして欧州諸国と続き日本は大きく後れを取っている。彼らはより精緻な生体情報や位置情報を活用し、AIを駆使して最適な解決策を提案している。これらの技術はトップアスリートだけでなく、一般市民の健康寿命を延ばす手助けもできる。高齢化が進む日本は、このような革新的技術にとって非常に有望な市場なのだ。

次に目を引いたのはゴルフ産業だ。バブル崩壊後に縮小傾向にあったゴルフ市場は、コロナ禍で「三密回避」可能な余暇活動として再び脚光を浴び、その後もその勢いは衰えていない。特に注目すべきはインドアゴルフの隆盛だ。最新の弾道測定技術と投影技術によって、よりリアルに近いゴルフ体験を可能にし、初期投資の負担も大幅に軽減されたおかげで、ますます身近な存在となっている。

地方自治体と大学の出展も目を引いた。住民のQOL(生活の質)向上、賑わい創出、スポーツツーリズム、産学官連携などキーワードは多岐にわたるが、スポーツが余暇や文化の枠を超えて、現代社会の課題解決に貢献する重要なプラットフォームとして期待されていることを再認識した。

オリンピックをみれば分かる通り、トップアスリートの勝負は紙一重である。この僅差を生み出すために最先端の工学や医学が結集され、その成果はわたしたちの日常生活に広範に応用されている。例えばF1のレースのために開発された技術は、バックミラーやAWDからカーボンファイバーを用いたボディーなど市販車の進化に貢献している。また、アスリートのけがの回復を早めるために開発されたリハビリや医療の技術が、一般医療に応用されている。

欧州最高峰の知性とされるジャック・アタリによれば、スポーツは人類が直面する致命的な脅威、たとえば気候変動に立ち向かいつつ、持続可能な生産活動を維持できる数少ない産業のひとつである。産業革命によって生まれ、余暇活動としての位置づけであったスポーツが、今や私たちのビジネスや日常生活において、欠かせない役割を果たしている。SPORTECでの3日間は、その重要性を改めて実感する機会となった。 (桜美林大教授・小林至)

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