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ドクター和のニッポン臨終図巻 歌手・高石ともやさん、市民ランナーの草分け的存在 記録ではなく持続が大事「ゆっくりでないと見えてこないものってあるんですよ」

zakzak by夕刊フジ / 2024年8月26日 15時30分

高石ともやさん(夕刊フジ)

敗戦のこの季節になると、思い出す曲があります。『死んだ男の残したものは』という谷川俊太郎さんが作詞、武満徹さんが作曲した反戦歌です。名立たるアーティストたちが歌っていますが、僕はこの人の歌声が好きでした。

『受験生のブルース』などのヒット曲で知られる歌手の高石ともやさんが8月17日、京都市内の病院で死去されました。享年82。死因は膵臓(すいぞう)がんとの発表です。

高石さんは、市民ランナーの草分け的存在としても有名でした。ホノルルマラソンには、外国人として最多出場となる計47回も出場し自己ベストは2時間45分台。トライアスロンやアイアンマンレースなどにも挑戦していました。後期高齢者になってからもフルマラソンを完走していたのですから、驚異的です。

高齢者でもマラソンをしていいのか? そんな相談を時々受けます。僕は今、66歳です。ゴルフならばいくらでもできますが、マラソンを始めようという気持ちには、到底なれません。走りたいと思えるだけでそれは健康な証拠。「誰かと競おうとせず、ゆっくり走ってください。疲れたら歩いてください」とお答えしています。高齢者が安全に走るためには、注意点もあります。思いつくままアドバイスをしましょう。

・どんなに若いつもりでも足腰の筋力が弱っていますからクッション性の高い、ちょっといいシューズを買ってください。

・走る前には入念なストレッチをしてしっかり体を伸ばしましょう。

・必ず飲み物を携帯すること。高齢になると、脱水症状の自覚がない場合があります。

・寝不足の日は走らないこと。

・マラソンではなく、スロージョギングを目指しましょう。鼓動が速くなったと感じたらすぐにペースダウンをしてください。

高齢になってからのスポーツは、「記録」ではなく、「持続」が大事。それにしても、高石さんの持続力はスゴイです。マラソンだけでなく、京都の円山公園音楽堂で開催していた宵々山(よいよいやま)コンサートも1973年から断続的に30回も続けていたそうです。

10年前の日経新聞のインタビューで、高石さんはこんなことを語っていました。

「ホノルルマラソンは成熟したマラソン大会です。(中略)生き方のヒントをもらえる大会。国も人も急成長する時期にはどうしても競う、争う方向に行きますが、成熟期は違う知恵がいる。ゆっくりでないと見えてこないものってあるんですよ」

なんと深い言葉でしょうか。

ゆっくりでないと、見えてこないことがある。若い頃には見えなかった景色がある。人と競わないことがすなわち成熟です。

■長尾和宏(ながお・かずひろ) 医学博士。公益財団法人日本尊厳死協会副理事長としてリビング・ウイルの啓発を行う。映画『痛くない死に方』『けったいな町医者』をはじめ出版や配信などさまざまなメディアで長年の町医者経験を活かした医療情報を発信する傍ら、ときどき音楽ライブも。

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