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お金は知っている 日銀・財務省は脱デフレの好機潰すのか 30年需要不足から抜け出ていないのに…財政・金融両面で引き締める面妖さ

zakzak by夕刊フジ / 2024年8月2日 6時30分

(夕刊フジ)

日銀は7月31日の金融政策決定会合で利上げと資金発行量大幅削減を決めた。2日前には、内閣府が2025年度には基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)が黒字になる見通しを発表済みだ(グラフ参照)。需要不足による30年デフレから抜け出ていないのに、財政、金融両面で引き締めるとは面妖な。

PB黒字化とは、防衛、社会保障、教育など政策支出を税収の範囲内に抑えるという意味である。将来の経済成長、国民の安全のための先行投資財源、国債発行が欠かせない国家財政と、勤労収入の範囲内で暮らす家計を一緒くたにする。主要国では日本だけが、PB黒字化目標を2002年度以降掲げている。

発端は1996年12月、橋本龍太郎政権が打ち出した財政構造改革方針にPB黒字化を盛り込んだことだ。

橋本政権は97年度に消費税増税、歳出削減および社会保険料の引き上げの緊縮3点セットを断行した。結果はデフレ不況の深刻化、税収激減による財政赤字拡大、政府債務の膨張だった。

失敗を重ねてきたにもかかわらず、財務官僚は何食わぬ顔で与党多数派と主要メディアを説き付け、増税、緊縮財政を歴代政権に飲ませてきた。脱デフレを掲げ、アベノミクスを打ち出した2012年12月発足の第2次安倍晋三政権もPB黒字化包囲網を突破できず、2度にわたる消費税大型増税の実施を余儀なくされた。それでも、政権末期の20年初めに勃発した新型コロナウイルス大流行を機に、国民一人当たり10万円の給付や中小・零細企業向けの大型補助を決断した。

大型財政出動の効果はてきめんだ。日本の景気は小康を保ったばかりではない。22年2月のウクライナ戦争勃発後のエネルギー価格高騰、米大幅利上げに伴う円安の進行で、物価が大幅に上がる。企業の売り上げが増え、消費税、法人税収増の好循環が生まれた。今年の春闘で大企業ベースでは5%台の賃金上昇が実現した。

岸田文雄政権は、6月21日に閣議決定した経済財政運営の基本方針(骨太の方針)で、「現在、デフレから完全に脱却し、成長型の経済を実現させる千載一遇の歴史的チャンスを迎えている」と意気込んだ。しかし、物価上昇や税、社会保険料負担を勘案した家計の実質可処分所得は前年比マイナスが続き、需要の低迷が続く。賃金アップ、物価上昇、消費増の好循環は生まれていないのだ。

ところが、財務省はPB黒字化を25年度以降も続けようと画策する。御用メディアも「大型補正予算を組んだり税収が元の水準に戻ったりすれば赤字に陥る『うたかたの黒字』といえる」(日経新聞7月29日電子版)と、緊縮堅持を説く。

植田和男総裁の日銀は黒田東彦前総裁時代の異次元金融緩和を3月に撤廃し、7月末に追加利上げに踏み切った。内閣府が表向きには「脱デフレ」を掲げながら、財務省と日銀のほうはデフレ圧力を呼び込むという支離滅裂ぶりだ。岸田首相はどこにいるのか。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

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