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前立腺肥大症・最新治療 誤解されがちな前立腺がんとの関係 「肥大症じゃないから前立腺がんにはならない」は考えを改める必要がある

zakzak by夕刊フジ / 2024年7月30日 15時30分

阿南医師(夕刊フジ)

夜間に尿意を感じて何度も目覚める、排尿しても勢いがなく、残尿感がある、トイレから出てきた途端「ちょい漏れ」で下着を濡らす…。中高年男性に多いこうした症状、前立腺肥大症が原因であることが多い。h

頻繁に目や耳にする疾患名だが、この病気について正しい知識を持っている人は意外に少ない。そこで今週は、この前立腺肥大症のメカニズムから最新の治療法までを、四谷メディカルキューブ泌尿器科科長の阿南剛医師に詳しく聞く。

第1回は、「前立腺」って、そもそも何をする器官なのか?

前立腺は、男性の膀胱のすぐ下にあって、尿道を包み込むような形状の器官。本来は「クルミ」程度の大きさだが、肥大化すると「ミカン」ほどになることもある。

この前立腺、何のために存在するのか。

「一番の役割と言えば、精子を保護する働きを持つ前立腺液を分泌すること。前立腺液は精液の約30%を占めるとされていて、残りの約70%は精嚢(せいのう)で分泌される精嚢液。精嚢は膀胱(ぼうこう)の背側にある器官で、精嚢液を分泌するとともに射精に必要な臓器です」

よく、前立腺は男性ホルモンを作っている―という誤解をされる。阿南医師によると男性ホルモンを作っているのは精巣(睾丸)で、前立腺は無関係。それよりも役割として挙げるなら、「射精」に絡む働きがあるのだという。

「性的刺激を受けて射精する瞬間、前立腺や精嚢が大きく収縮することで、勢いをつけて射精ができるのです。その意味では生殖機能の一部を担っている―と言うことはできますね」

前立腺肥大症の治療によって、この通常の射精ができなくなることがある。精液が体外に出ず、反対方向の膀胱に落ちてしまう「逆行性射精」と呼ばれる現象だ。

「たとえ精液が膀胱に流れても、尿と一緒に排出されるので、基本的に健康被害はありません。しかし今後、自然妊娠を希望される方は避けた方がいい」

このことからも、前立腺は生殖機能の一部において、〝射精〟に大きな役割を持っている―と言えそうだ。

もう一つ、前立腺についてよく言われがちな誤解に、「前立腺肥大症と前立腺がんの関係」がある。

前立腺肥大症はどんなに大きくなっても命を脅かすことはない。頻尿や尿漏れなど日常生活での不便は生じるが、良性疾患なので、落ち着いて治療選択ができる。

一方の前立腺がんは悪性腫瘍なので、のんびりできない。中には進行の遅いタイプのがんもあるが、それは組織検査をしなければ分からないので、自己判断で放置するのはとても危険だ。

そして、この前立腺肥大症と前立腺がんの2つの病気には、因果関係はない。「自分は肥大症じゃないから前立腺がんにはならない」と思っている人は、いますぐその考えを改める必要があるのだ。

「同じ前立腺でも、肥大するのは内側の〝内腺〟であるのに対して、がんができるのは外側の〝外腺〟です。場所も発生のメカニズムも全く異なるのです」 (取材・長田昭二) 【あすは「前立腺肥大症になる仕組みの検証」です】

■阿南剛(あなん・ごう) 四谷メディカルキューブ泌尿器科科長。2008年、名古屋市立大学医学部卒業。聖路加国際病院、東北医科薬科大学病院等を経て、22年4月から現職。専門は前立腺肥大症と尿路結石症の内視鏡手術。日本泌尿器科学会専門医・指導医。日本排尿機能学会専門医ほか。

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