日本の解き方 基礎的財政収支に意味はあるか 4・5兆円の赤字試算 日銀含めた「統合政府」の債務に問題はないのに…財政が大変だという滑稽さ
zakzak by夕刊フジ / 2025年1月23日 6時30分
2025年度の基礎的財政収支(プライマリー・バランス、PB)が黒字見通しから4・5兆円の赤字になるとの試算が示された。「財政規律がゆるんだまま」との報道もある。
基礎的財政収支とは、税収・税外収入と、国債費(国債の元本返済や利子の支払いに充てられる費用等)を除く歳出との収支のことをいう。
これを国と地方で算出して、政府は議論している。地方では若干の黒字なので、PB赤字はほぼ国である。
しかし、ここでいう「国」とは、国の一般会計・特別会計など狭義の中央政府である。本来、中央政府の財務の健全性をみるのであれば、日銀など政府機関を含めた広義の政府部門全体(統合政府)をみなければいけない。企業の財務分析で、本体企業だけではなく関連会社を含めた連結ベースでみなければいけないのと同じ理由だ。これは本コラムで繰り返して指摘した。しかも、広義の政府部門でみれば、財政状況は先進7カ国(G7)中2番目に良好だ。
17日の経済財政諮問会議で内閣府は最新の試算を示し、新年度は、昨年7月の黒字見通しから、4・5兆円程度の赤字になるとした。
その理由は、13兆円の今年度の補正予算が新年度にまたがる事業があることや、防衛力強化の財源や「年収103万円の壁」の見直しに伴う税収の減少などだ。
はっきりいえば、正しく広義の政府部門で計算されていないので、今のPBの数値には大した意味はないと思っている。
こうした話は、筆者が内閣府で経済財政諮問会議特命担当であった20年前からの主張だ。ただし、当時は広義の政府部門の概念がよく理解されなかったのでまともな議論ができなかった。しかし、2018年から、国際通貨基金(IMF)でも各国の数字を公表しているので、そうした世界の流れに反する今の経済財政諮問会議は害悪ですらある。
しかも17年には、ノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・E・スティグリッツ氏に経済財政諮問会議に来てもらい講演もしてもらったのに、学習効果もない。
細かい技術的な話は省くが、PBが重要なのは、資産を考慮したネット債務残高の動きに関係があるからだ。広義の政府部門でのネット債務残高に問題がないのに、狭い政府でPBを計算して、財政が大変というのは滑稽ですらある。
政府が計算しているPBが数兆円の赤字になっても、日本政府の財政状況は全く悪くないと言ってもいい。財務省やそのポチ、マスコミがいくら「日本の財政が悪い」といっても市場は正直だ。
実際、真の財政事情を表すCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)市場で日本は万全であり、先進国の中で破綻確率は最低レベルクラスだ。
ちなみに、どこの国でも成り立つが、統合政府のネット債務残高対国内総生産(GDP)比率は、債務破綻確率をうまく説明できる。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
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