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お金は知っている 日本再生を阻む「プライマリーバランス黒字化」 財務官僚は毎年異様に執着 現代の資本主義は政府が借金すればこそ成長できる

zakzak by夕刊フジ / 2024年6月21日 11時0分

データ:OECD経済アウトルック(夕刊フジ)

歴代の政権が6月に打ち出す「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」は各省庁の官僚作文の寄せ集めだ。それでも後半の財務官僚担当分には、日本経済の命運を左右するくだりがある。中期的経済財政の枠組みを述べる章の中のたった1行である。

それは「基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の黒字化」である。財務官僚は毎年、この1行分に関し、異様なほど執着し、首相と自民党に綿密に根回しし、事前工作を施してきた。黒字化を盛り込んだ骨太を閣議了承させる。主計局官僚が閣議決定をタテにとって各省庁からの予算要求を査定する。

PBとは、社会福祉、防衛、公共投資、教育などの政策経費は税収の範囲内にとどめる家計簿式の発想だが、財務官僚は「健全財政」だと不勉強なメディアを洗脳する。

現代の資本主義は発達した金融市場に支えられているが、その金融市場は国債を中心とする債務証券が主役である。つまり政府が借金すればこそ、カネの流れが活発になり、経済が成長できる。現に、米大手投資ファンドのカーライルの首脳は日経新聞6月18日付朝刊で、米景気が堅調な理由について聞かれ、「連邦政府の構造的な財政赤字」だと答えている。

今回の「骨太2024」の原案は、岸田文雄政権が財務省支配下にある現実をまざまざと見せつけた。骨太2022年、23年から消えていた「PBの2025年度黒字化目標達成」のフレーズが復活したのだ。

故安倍晋三元首相が凶弾に倒れる前の22年6月、骨太からPB黒字化目標削除を求めたのに対し、岸田首相は同意した。財務官僚は巻き返しを図り、PB目標の表現を外す変わりに「骨太2021年に基づく」という下りを入れさせた。骨太21は黒字化目標を明記しているので、25年度目標は生きているぞ、という。姑息(こそく)であるが、やはり迫力に欠ける。

今回は財務官僚にとって障害はないのも同然だ。安倍氏がいなくなったうえに、積極財政派議員が多い安倍派も政治資金問題で解散だ。もとより財務官僚寄りの岸田首相や自民党幹部に異論の出ようがない。

PB黒字化は財務官僚や財務省御用の政治家、メディアを喜ばせても、国家と国民に災厄を招きかねない。前述の通り、政府が借金しないと市場経済は活力を失う。ましてや、わが国は本欄の前回でも詳述した通り、家計の実質可処分所得は減り続け、需要不足だ。「30年デフレ」から脱却できていない。なのに、需要萎縮を招くPB黒字化を急げばどうなるか、結果はデフレの継続になりかねない。骨太24は冒頭で「脱デフレの千載一遇のチャンス」とうたうが、岸田政権は緊縮財政でデフレをさらに長引かせようとしている。

グラフは日米のPBのGDP比と実質経済成長率の比較である。先に挙げた米大手投資ファンド首脳の言う通り、財政収支が先進国で「最悪」の米景気は活力に満ちている。PB比率が低い財政優等生の日本はデフレ不況に沈む。 (産経新聞特別記者 田村秀男)

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