1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 政治

日本の解き方 日本経済が心配な2つの要因 利上げと最低賃金引き上げが雇用にマイナスとなる恐れも かつての民主党政権のような失業増加が懸念

zakzak by夕刊フジ / 2024年8月7日 11時0分

財務省(夕刊フジ)

日銀が行った追加利上げによって、住宅ローン金利や企業の資金繰り、賃金や雇用などにどんな影響が出ると考えられるだろうか。

短期金利に連動する変動型住宅ローン金利や企業の資金繰りに使われる融資の金利は、それぞれ0・15%程度引き上げられるだろう。預金金利も引き上げられるが、今のところ0・1%程度にとどまる見込みだ。短期金利だけをみると、借入者にとってはマイナス、預金者にとってはプラス、金融機関にとってはややプラスかトントンだ。

ただし、金融機関は日銀当座預金の金利が上がるので、大きなプラスになる。この部分は、政府の歳入減となるので、政府から金融機関への補助金と考えてもいい。

短期金利の上昇は、長期金利にも波及するだろう。というのは、日銀は今後2年程度、国債買い入れ額を減額する予定であるので、金利の上昇要因になる。うがった見方をすれば、今後2年程度、政策金利も引き上げる可能性もあるといえる。こうした金利先高感は長期金利の上昇圧力になる。長期金利が上昇すれば、固定型住宅ローン金利や企業の設備投資関連の金利が上昇する。

長期金利の上昇は、政府の資金調達コストを高め、財政健全化に支障が出るともいわれる。たしかに貸借対照表の「負債サイド」の利払い費の増加要因になるが、一方で「資産サイド」の運用利回りもアップになり、影響はほとんど相殺されるので、マスコミが騒ぐほどの財政悪化要因ではない。

この点、マスコミは財務省から垂れ流される情報をうのみにしているといえる。本来であれば税外収入として日銀納付金が増え、財政収入に貢献すべきものを、金融機関に日銀当座預金金利として「お小遣い」を与え、恩を売っているようにもみえる。財政当局は、財政危機を演出することは好都合と考えていると邪推してしまいそうだ。

いずれにしても、金融機関にだけ便益を与えるような今回の日銀の利上げは、実体経済にはむしろマイナスだ。雇用に悪影響が出て、ひいては賃金にも良い結果をもたらさないかもしれない。

今回の利上げと同時期に、最低賃金(時給)を全国加重平均で過去最大となる50円(5・0%)引き上げて1054円とすることを決めたが、これも雇用にはマイナスになるだろう。

筆者は安倍晋三政権当時、労使双方が納得するような「穏便な形」での最低賃金の引き上げに関する計算式を導き出したことがある。今から9年近く前のことなので、改めて「穏便な形」での最低賃金を算出すると、「6・9から『前年の失業率に1・2を乗じた数』を引いたもの」が最低賃金上昇率となった。前年の失業率は2・6%なので、3・7%程度にとどめておくべきだった。

今回の岸田政権の引き上げ率と「穏便な形」の引き上げ率との乖離(かいり)は民主党政権下の2010年に次いで2番目に大きい。この点からも、かつての民主党政権のように、雇用を作れず、失業が増加する懸念もある。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください