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日本の解き方 政治家が〝金融政策正常化〟発言の「異常」 完全ではない日本経済、利上げや円高で景気は腰折れ 総裁選ではマクロ経済論戦を

zakzak by夕刊フジ / 2024年7月31日 15時30分

日本銀行本店(夕刊フジ)

河野太郎デジタル相が、日銀に円安対策として利上げを求める発言をしたことが話題になった、自民党の茂木敏充幹事長も「段階的な利上げの検討も含めて金融政策を正常化する方針をもっと明確に打ち出す必要がある」と述べた。そして岸田文雄首相も「金融政策の正常化」に言及している。

率直にいって、政治家が「金融政策の正常化」という言葉を口にするとは驚いた。この言葉は、日銀がマスコミや学者に対して利上げしたい時の根回しに使われている。自民党総裁候補まで根回し対象になっていることを示唆しているのだろうか。

日銀は、安倍晋三元首相が掲げたアベノミクスの金融緩和に相当参ったのだろう。筆者も安倍氏に金融政策をレクチャーした一人であるのは、同氏の「回顧録」でも明らかになっているが、その内容は、米プリンストン大に留学した際に知り合いになったベン・バーナンキ氏やポール・クルーグマン氏が語っていた範囲のことだ。

実際、彼らを安倍政権時代に日本に招聘(しょうへい)して話してもらったが、安倍氏の感想は「高橋さんから聞いていた話とまったく同じだね」だった。

政治的党派からみれば、バーナンキ氏は共和党、クルーグマン氏は民主党であるが、金融政策に違いはない。インフレ目標を正しく理解していれば違いはあり得ない。

そして、本コラムで何度も繰り返しているが、今の日本のインフレ状況では、利上げはあり得ない。

ところが、日銀は「金融政策の正常化」と言いながら、利上げを志向する。彼らの言い分は、今の金利は「均衡レート」ではないので、早く戻すべきだというものだ。その均衡レートは2%弱としているようだ。

これは正しくない。日本経済はまだ完全ではなく、長いデフレ時代からの回復過程だ。金融政策としても、「ビハインド・ザ・カーブ」の原則では、金融政策は実体経済の動きから遅れて行うべきだ。つまり、インフレ目標を超えたインフレ率になるまで、具体的には4%程度のインフレ以上になるまで利上げを行ってはいけない。いつかは利上げになるかもしれないが、それは今ではない。

日銀の今の考え方は、アベノミクス以前にみられた、早めの利上げで景気の腰を折り、デフレを継続してきたスタンスに通じている。

自民党総裁選では、どのような金融政策をとるべきなのか、議論すべきだろう。同時に、円安が日本経済に悪なのかどうかも合わせて議論したらいい。今の段階で利上げをすることや円高になることは日本経済に悪いが、日銀の「金融政策の正常化」という口車に乗った候補は、利上げや円高を志向するだろう。さらに、財務省の財政健全化に乗り、緊縮財政で行くのか、それとも積極財政で行くのかもただしたらいいだろう。それで、マクロ経済への理解度がバレるはずだ。

いずれにしても、自民党総裁選でのマクロ経済議論を望みたい。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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