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ニュース裏表 峯村健司 中国の諜報機関はどのように世界を〝欺いた〟のか 国家安全部の役割を暴いた新著『スパイと嘘』日本語版が出版

zakzak by夕刊フジ / 2024年8月18日 10時0分

アレックス・ジョスキ氏著『スパイと嘘』(飛鳥新社)(夕刊フジ)

「ケンジ、あの本はすごい。中国のスパイ組織の暗躍を見事に暴いているからだ」

2022年末、出張で訪れた米首都ワシントンで面会した複数の米政府当局者から、ある新著を読むように薦められた。

『Spies and Lies:How China’s Greatest Covert Operations Fooled the World(スパイと嘘=世界を欺いた中国最大の秘密工作)』

オーストラリアの若手研究者、アレックス・ジョスキ氏が、中国の諜報機関、国家安全部が米国など各地において水面下で展開している世論工作について詳しく解説している。北京に6年間滞在したこともあり中国語を使いこなすジョスキ氏が、これまでベールに包まれていた国家安全部の活動を中国の膨大な公開情報を元に分析している。

驚いたのは、国家安全部が関係している友好団体や交流組織を使って、国際会議や共同事業の名目で米国の政府当局者やシンクタンクの研究者らに積極的にアプローチしていることだ。しかも筆者が日頃付き合っている米中両国の関係者らを、いずれも実名で暴露しているのだ。

これまで国際派の改革派だとみられていた中国の学者や研究者が、実は水面下で国家安全部と歩調を合わせており、中国が大国となっても脅威とはならないという「平和的台頭」論のほか、中国脅威論を打ち消すような「中国崩壊論」などを米側に流布してきたことが明らかになった。

ワシントンで「中国通」といわれていた中央情報局(CIA)出身の研究者や著名な投資家らが、中国側の巧みな工作に籠絡されている実態も浮かび上がった。

中国の情報機関を長らく研究してきた筆者は、国家安全部の任務について、国内外における情報収集や外国からの防諜活動に焦点を当てて調べてきた。同書によって、「影の組織」がこれほど大胆に世論操作を展開していた事実に驚きを隠せなかった。

そして、同著の日本語版『スパイと嘘』が今月6日、飛島新社から出版された。多くの翻訳本を手がけてきた奥山真司氏が、原文に忠実に分かりやすく翻訳をしている。筆者も解説文を寄稿している。

圧巻だったのが、日本語版だけに記された附章だ。国家安全部が運営する文化団体が、安倍晋三元首相をはじめ日本の政界にアプローチしていた実態が克明に描かれている。中国の諜報活動に対して、あまりにも無防備な日本の現状には改めて焦燥感を覚えずにはいられない。

中国の習近平体制は「国家の安全」を重視して諜報活動に力を入れている。その攻勢は強まっており、無関係な日本企業はないといっても過言ではない。企業の情報や従業員の安全を守るためには、必読の書といえよう。 (キヤノングローバル戦略研究所主任研究員)

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