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ぴいぷる 脚本家・演出家の矢島弘一 立ち位置は弱者の側に…〝書く〟は「僕の中のすべて」 舞台「オケピ!」に衝撃、家業を経営しながら演劇修行

zakzak by夕刊フジ / 2024年11月21日 6時30分

脚本家・演出家の矢島弘 (相川直輝撮影)(夕刊フジ)

2つの台本提出

「3年前にお話をいただいて、もう100回ぐらい書き直しているんですね、この脚本」

と、さらりと言うが、相当なことだ。しかし、原作の小説が持つ面白さを突き詰めるためには必要なことだった。

22日公開の映画「六人の嘘つきな大学生」(佐藤祐一監督)は、浜辺美波(24)らが演じる就活生6人の裏の顔が暴かれていくミステリー。浅倉秋成の原作小説は巧みなレトリックによって張り巡らされた伏線が回収されていく。それだけに映像化は簡単ではなかった。

「原作の面白さをどうやって映像にするのか。原作の浅倉先生もおっしゃったんですが、そのまま映像化してもなかなか伝わりにくいだろうと。じゃあ自分なりにどうすれば面白くできるだろうかと考えましたし、監督やプロデューサー陣とも議論を尽くしましたね」

最終的にクランクインの数日前に、ようやくエンディングが違う2本の台本をまとめあげた。

「それだけみんなでもんでいると、何が正解か分からなくなるじゃないですか。私自身も分からなくなるし。なので、最後の最後は2つの台本を提出しました。後は監督やプロデューサー陣で決めてもらいました」

しかし、正直なところ「両方ともありだと思っていたので、どちらが選ばれてもいいものを出しました」というだけあって、「映画も、原作に負けないような素晴らしい作品になっているので楽しんでいただけると思います」と胸を張る。

実は映画の脚本は初めての挑戦だ。劇団「東京マハロ」を主宰し、戯曲やドラマの脚本などで頭角を現し、ここまでたどり着いた。しかし、演劇の世界に足を踏み込んだのは30歳になってからというから驚かされる。

「長男だったので、25歳でスポーツクラブのインストラクターを辞めて、実家の運送業者を継いだんですが、でも面白くなかったんですよ。うちが紙媒体を運んでいたので、下火になっていくんじゃないかと不安もあり、自分の将来を描いたときにあまりいいことが浮かばなくて…」

そんなとき、劇作家、三谷幸喜の舞台「オケピ!」を東京・青山劇場で観劇した。

「衝撃を受けました。いまだに覚えてますね。休憩の間、ずっとすごいものを見ているんだとショックを受けていたんです。で、自分が何でこの世界にいないんだと、何かかきたてられるものがあって。絶対、この世界に行きたいと思うようになったんです」

最初は演劇ではなく、ナレーションの学校に行き、結婚式の司会などをやっていた。もちろん会社をやりながら、二足のわらじだった。

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