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日本の解き方 ロシア経済〝世界4位〟の虚実 「購買力平価」は高所得国と低所得国で大きな差 最も好都合な数字使うプーチン大統領

zakzak by夕刊フジ / 2024年6月15日 10時0分

ロシアのプーチン大統領が、「ロシアの購買力平価での経済規模が日本を抜いて世界4位になった」と発言したと報じられた。

各国の国内総生産(GDP)はそれぞれの自国通貨建てだが、データを比較するために、共通の通貨に換算しなければならない。基軸通貨である米ドルに換算することが一般的だが、その方法は2つに大別できる。

1つは市場為替レートで、外国為替市場の実勢レート(期末レートまたは期間平均レート)を使用する。現時点では、1ドル=155円程度だ。

もう1つは購買力平価(Purchasing Power Parity=PPP)為替レートを使う。これは、それぞれの国で同額の財やサービスを購入する場合、自国通貨建てとドル建てがあるが、その比率を為替レートとするものだ。

具体的には「ビッグマック指数」が有名だ。日本のビッグマックは480円(都市部店舗などは530円)だが、米国では5・69ドルなので、PPP為替レートは1ドル=84~93円という「円高」だ。実際に国際機関がPPP為替レートを算出するときには、多くの商品・サービスを採用しそれらの加重平均としている。

次にデータをみておこう。世界銀行が公表している2022年の名目GDPデータであるが、USドルベースで、1位は米国で25兆4397億ドル、2位が中国で17兆9631億ドル、3位が日本で4兆2564億ドル、4位がドイツで4兆824億ドル、5位がインドで3兆4166億ドル、6位が英国で3兆890億ドル、7位がフランスで2兆7790億ドル、8位がロシアで2兆2404億ドル、9位がカナダで2兆1614億ドル、10位がイタリアで2兆497億ドルとなっている。

一方、PPPドルベースでは、1位が中国で31兆7730億ドル、2位が米国で25兆4397億ドル、3位がインドで12兆9981億ドル、4位がロシアで5兆9878億ドル、5位が日本で5兆8621億ドル、6位がドイツで5兆5822億ドル、7位がブラジルで4兆1195億ドル、8位がインドネシアで3兆9798億ドル、9位がフランスで3兆9147億ドル、10位が英国で3兆8482億ドルだ。

PPP為替レートは高所得国では市場為替レートとの差は小さいが、低所得国ではその差が大きく出がちだ。というのは、非貿易財やサービスの価格は、高所得国よりも低所得国の方が安い傾向がある。PPP為替レートはそれを調整しているため、PPPドルベースはUSドルベースより大きくなる傾向がある。なお、世銀の別のデータでは、日本が4位、ロシアが5位となっている。

対象とする商品・サービスの差があるため、国際機関の間でもPPPドルベースGDPは異なる。国際通貨基金(IMF)が公表している22年のPPPドルベースの名目GDPは、1位中国、2位米国、3位インド、4位日本、5位ドイツで、ロシアは6位となっており、世界銀行との数字とも異なる。

結局、プーチン大統領は最も好都合の数字を使ったわけだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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