日本の解き方 G7でロシアの凍結資産活用へ前進 日本は過度な肩代わりに懸念 EVなど中国の過剰生産の問題、対中関税では法改正が必要だ
zakzak by夕刊フジ / 2024年6月20日 6時30分
イタリア南部プーリアで、先進7カ国首脳会議(G7サミット)が開かれた。議論の成果をまとめた首脳宣言では、制裁によって凍結したロシアの国有資産から得られる収益を活用し、約500億ドル(約7・8兆円)以上を新たなウクライナ支援に充てると明記した。
ウクライナ支援を年末までに行うため、欧州連合(EU)などで今後、必要な手続きが行われる。ロシアが侵攻をやめウクライナにもたらした被害を賠償するまで資産の凍結は続けるとしている。なお、「ウクライナへの揺るぎのない支援は必要とされる限り続く」とされている。
実は、交戦関係にない第三国がロシア資産を使えるかは国際法上微妙な問題だったが、英国と米国が、消極的だったドイツやフランスを説得した経緯がある。凍結資産は3000億ドル(約47兆円)で、その3分の2の2200億ドル(約34兆円)程度はEU諸国が凍結しているものだ。
当分、G7国民が肩代わりをしてウクライナ支援を行い、その後、ロシア資産が充当されるのではないか。
日本の凍結資産は50億ドル(約7800億円)程度に過ぎないので、日本が過度な肩代わりをしたときに、回収できない可能性がある。
中国とロシアの関係について、「ロシアへの支援に深い懸念を表明する」とされている。
ロシアの軍需産業を支援する中国を含めた第三国の団体に対策を講じるとともに、いわゆるロシアの「制裁逃れ」に関与する者に対して「深刻な代償を支払わせる」としている。
しかし、対ロシア制裁の抜け穴となっているのは、中国などであり、その実効性は引き続き危ういものだ。
首脳声明では、電気自動車(EV)などの中国の過剰生産の問題について懸念を示すとともに、G7として連携して対処するとしている。これについて、米国とEUは関税引き上げを打ち出しているが、日本は対応できない。
というのは、日本の関税定率法では、引き上げに当たり世界貿易機関(WTO)など国際ルールでの対応が厳格に規定されており、今の国際機関の機能不全は想定外の事態だからだ。
筆者は、理念としては日本の関税定率法を理解できるが、今のような国際機関の機能不全では現実的な対応が必要で、そのための法改正もしなければいけないという立場だ。だが、国会を延長しないと法改正できない。岸田文雄政権は延長はないというが大丈夫か。日本が関税引き上げをしないと中国製品が日本に流入し、非難を受ける恐れがある。
また、G7は、インド太平洋地域における中国による南シナ海や東シナ海での海洋進出に対する「深刻な懸念」を示し、武力や威圧による一方的な現状変更の試みへ強く反対した。
今回のG7サミットでは、ウクライナ支援の継続で結束を確認するとともに、中国を牽制(けんせい)するということで、西側諸国の一定の結束が図られたのは、よかった。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
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