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渡邉寧久の得するエンタメ見聞録 浮世節の魅力味わえる二代立花家橘之助のCD レコーディングが始まったのは19年、最終的な収録は今年までと長丁場の作品

zakzak by夕刊フジ / 2024年10月7日 11時0分

久しぶりにCDプレーヤーを起動させた。二代立花家橘之助(63)が初めてリリースしたCD「橘の字の浮世語り」(ジパングレーベル)が流れ出す。部屋中がその瞬間、和の空気に一変した。

寄席の彩りとして、令和の今も欠かせない浮世節。明治20年ごろ、初代の立花家橘之助が創始し、流派の家元を名乗り出したと伝えられる三味線音曲だ。三味線漫談家の三遊亭小円歌(当時)が2017年に名跡を襲名し、浮世節を復活させた。

演芸場ではしょっちゅう耳にしているが、音響設備が最新でもなく、さほどいい音ではない。歌詞の細部も聞き取れない。それが当たり前だと思っていたが、CDは音質もクリアで、歌詞カードも確認できる。今まで、知っているつもりで聞いているつもりになっていたことが恥ずかしい。

収録曲は浮世節の代表曲「たぬき」のほか、「品川甚句」や「おてもやん」など14曲にボーナストラック1曲というラインアップ。本人による楽曲解説もためになる。

レコーディングが始まったのは19年。最終的な収録は今年までかかったという長丁場の作品だ。

紆余曲折を経て、橘之助は、寄席に出演する際と同じように着物姿でスタジオに敷いた座布団に座り、三味線を弾きながら歌い上げるというスタイルに落ち着いた。耳にはヘッドホーン。そこから流れるのは、スタジオの他のブースで演奏する落語家・桂やまと(小鼓、締太鼓、木魚など)、古今亭志ん雀(篠笛)、柳亭市童(大太鼓、当たり鉦など)の音色。3人は寄席演芸界でも名うての、笛太鼓の実演家だ。

レーベルを傘下に持つ「現音舎」の横田義彰会長(今年2月に死去)が、関西の三味線弾きのCD「平成の女道楽 内海英華でございます」(09年発売)の対として、江戸の三味線弾きとして橘之助の作品を残したいと発案したことがすべてのきっかけ。小円歌時代から口説き、当初は躊躇していた橘之助の首をやっとのことで縦に振らせたという。

執念の仕事の結果はCDとなり、浮世節の魅力を味わえる絶好の資料になった。

「長いスパンで、コンスタントに売れてくれれば」と担当者はロングセラーを期待する。8日発売。 (演芸評論家・エンタメライター)

■渡邉寧久(わたなべ・ねいきゅう) 新聞記者、民放ウェブサイト芸能デスクを経て演芸評論家・エンタメライターに。文化庁芸術選奨、浅草芸能大賞などの選考委員を歴任。東京都台東区主催「江戸まちたいとう芸楽祭」(ビートたけし名誉顧問)の委員長を務める。

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