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勝負師たちの系譜 藤井聡太王座、3連勝で初防衛 AIが90%「負け」の局面ひっくり返す 羽生九段の全盛期上回る終盤の逆転力

zakzak by夕刊フジ / 2024年10月12日 15時0分

藤井聡太王座に永瀬拓矢九段が挑戦する、王座戦五番勝負第3局は、9月30日、京都市東山区の『ウェスティン都ホテル京都』で行われ、藤井が勝って、3連勝で王座初防衛を決めた。

この将棋を一言で言えば、「また昨年と同じことが繰り返されたのか」というのが私の感想だった。

永瀬の先手番で始まった第3局は、両者得意の角交換腰掛銀に。お互いが手待ちをしながら隙を伺う展開となった。

先に動いたのは後手の藤井で、桂交換の後、敵陣に馬を作って迫り、ペースを掴(つか)んだかに見えた。しかし終盤で一つ利かした王手が疑問だったか、形勢を損ね、徐々に永瀬の側に形勢は傾いた。

最終盤になると、永瀬は藤井玉をほぼ受けのない局面に追い込み、勝ちがハッキリ見える局面となった。AIの数値も、いつの間にか90%を超えていた。

さすがにこの将棋は永瀬が勝ったか、と思った瞬間、藤井が放った香の王手が最後の罠(わな)だった。

この部分を再現しよう。合い駒はAかBしかなく、歩を打つAは受けとしては安全だが、相手玉が詰まなくなるため、普通なら絶対に指さない手。

Bの桂を跳ぶ手は、いかにも危ない受けだが、歩が打てれば相手玉は詰むので、実際はBで勝ちだったのである。

しかしすでに秒を読まれている1分将棋。60秒の間に、相手玉の詰みと自玉の詰みを両方読まねばならない。

こういう時間のない時、通常プロは易しい方から先に読む習性がある。

つまり相手玉が詰まなくなれば、簡単に負けだから、危なくてもBを選ぶ。それで詰まされたら仕方ないと。これがプロの、正しい負け方だ。

しかし藤井の詰ます正確さ、速さを誰しも知っているから、つい危ない受けはしたくない、という方向になってしまうのだと思う。

永瀬ほどの精密機械を狂わせるほどの終盤力が、藤井に備わっているということだ。

昨年も勝つ確率90%超えから、2局続けて敗れた永瀬だったが、今年も同じ轍(てつ)を踏んだのは残念だったであろう。

終盤のすでに結論が出ている局面から、逆転勝ちをし続ける棋士は、今まで羽生善治九段の全盛時代くらいしか記憶がないが、藤井はすでに上回っている気がする。

このまま全棋士を制覇するのか、若手の挑戦者とどう戦うのか、佐々木勇気八段相手の竜王戦が楽しみである。

■青野照市(あおの・てるいち) 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。

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