1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 政治

岩田温 日本の選択 「自民党が野党に転落する日」派閥解散で立ち上げた新人議員〝背骨勉強会〟の問題点、政治は教養だけでは動かない

zakzak by夕刊フジ / 2024年9月9日 6時30分

派閥解消を進めた岸田文雄首相(夕刊フジ)

派閥を解消して、新人議員の教育機関を失った自民党がにわか仕立てに作り上げたのが「背骨勉強会」だ。対象は、当選4回以下の衆院議員と当選2回以下の参院議員、衆院選や参院選に立候補を目指す新人や元職とのことだ。

常識を持つ日本国民ならあきれるしかない。誰がどう考えてみても、「研修を終えてから立候補すべき」だろう。そもそも、当選しながら研修が必要だとはどのような了見なのだろうか。政治家としての資質を欠く人物を立候補させるとはあまりに国民を侮辱していないか。

「愚かな世襲議員」や、「何も考えていない国会議員」が存在することを、自ら暴露しているようなものではないか。もう一点指摘しなければならないが、この勉強会が滑稽なのは座学で政治が理解できると考えている点である。座学が不要だと言うわけではない。教養はあるべきだ。しかし、政治は教養だけでは動かない。

現代保守主義の理論家である英国の政治哲学者、マイケル・オークショットは『政治における合理主義』(勁草書房)の中で、2つの知性があると指摘した。「技術知」と「実践知」である。

スマートフォンの使い方は講師が優れていれば、数百人に教えても、たちどころに理解することが可能であろう。語れば理解できる。それが「技術知」というものだ。

しかし、オークショットは「政治は技術知の世界ではない」と説く。「実践知」の世界なのだ。言葉によって伝達が不可能だが学ばなければならない知性。それが「実践知」だ。

自民党総裁選に名乗りを上げた元大蔵官僚、小林鷹之氏が面白いことを述べている。政策に上下はないが、酒席には上下がある。自分がどこに座るのか。あるいは、誰を上席に置かねばならないのか。こうした知性を派閥で学んだと述べていた。実践の中でのみ養うことが可能な事柄であろう。こうした実践知を鍛えあげる教育機関、それが派閥だった。

恥ずかしい話だが、大学で政治学を学んでいた際、自民党の派閥の存在意義が理解できなかった。それぞれの派閥が異なる政策を訴えていたのならば、その存在意義を理解できる。しかし、同じ派閥に所属しながら思想信条がまったく異なる政治家が数多い。派閥とは何のために存在するのかが理解できなかったのだ。若かったとしか言いようがない。

人間は理屈のみでは動かない。人格、人柄、心の根の良さ。最期に決定的に大事になるのは人間性そのものである。人間性を鍛えあげる教育機関、それが派閥だった。

派閥を解消して人間付き合いをやめ、座学でのみ政治を学べると考える自民党。自らの先人たちが築き上げた宝を、ゴミのように扱う所業は正気の沙汰ではない。自民党が野党に転落する日も遠くないだろう。謙虚に自らの来歴を振り返るべきだ。今自民党に欠けているのは自民党らしさである。 =おわり

■岩田温(いわた・あつし) 1983年、静岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、同大学院修士課程修了。大和大学准教授などを経て、現在、一般社団法人日本学術機構代表理事。専攻は政治哲学。著書に『興国と亡国―保守主義とリベラリズム』(かや書房)、『後に続くを信ず―特攻隊と日本人』(同)、『新版 日本人の歴史哲学~なぜ彼らは立ち上がったのか』(産経新聞出版)など多数。ユーチューブで「岩田温チャンネル」を配信中。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください