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渡邉寧久の得するエンタメ見聞録 〝玉石感〟満載、カルトの逸品がよみがえる「デューン/砂の惑星 4Kリマスター版」不快感を散りばめた〝リンチワールド〟へ

zakzak by夕刊フジ / 2024年7月22日 6時30分

ドラマ「ツインピークス」で世界中の熱狂的なファンを〝沼〟らせたデヴィッド・リンチ監督の作品「デューン/砂の惑星 4Kリマスター版」が、8月2日に公開される。

日本では1985年に公開された。監督本人によれば、脚本を作るだけで1年半。撮影には週休1日で3年半の年月を費やしたという。巨額の制作費があだになり、興行成績としては赤字になってしまったが、映画ファンの間では長年、カルトの逸品として一目置かれている作品だ。

時は、西暦10191年。香料を制する者が宇宙を制する、と言われ、長寿の秘薬をめぐり人々が争い、決闘と和睦を繰り返している世界。秘薬は宇宙を支配する力を持つ「メランジ」と呼ばれ、権力者は血眼になり、入手に命を懸ける。

香料があるとされる星はデューンと呼ばれる荒涼とした惑星・アラキス。一面砂に覆われた不毛の地で、外界温度が350度。巨大な虫が立ちはだかり、水は命を支える貴重な資源になっている。

今から見れば遠い未来の出来事だが、人間の本質は現在と変わっていない。むしろ劣化していると言っていいほど、争いや殺戮を好む。支配する勢力と支配される勢力が明確に分かれ、戦いは生き延びるための戦いという聖戦の意味を帯び、命の尊厳も人権のへったくれもない。

媚薬を入手するという一点の欲望に、権謀術数と心理戦と裏切りと失脚が入り乱れる。そこに垣間見えるのは、むき身の人間性だ。

公開当時スクリーンで見て、その後、ネットのサブスクでも見たが、登場人物の相関関係を頭に叩き込み、それぞれの表面的な言動と内面的な本音をすべて理解にするには骨のおれる構造だ。ストーリーが時折飛びすぎ、見る側は脳内回路を自前でつなげる必要に迫られる。

それさえ何となくこなせることができれば、毒々しいメークアップに衣装、悪趣味な小道具にビジュアル装置などが、不快感を散りばめたリンチワールドへと見るものを連れ去る。

とはいえ、全面的に傑作なのかという太鼓判を押しにくさがあるのも確か。そのあたりの〝玉石感〟が、この作品の最大の魅力でもあるのだが。 (演芸評論家・エンタメライター)

渡邉寧久(わたなべ・ねいきゅう) 新聞記者、民放ウェブサイト芸能デスクを経て演芸評論家・エンタメライターに。文化庁芸術選奨、浅草芸能大賞などの選考委員を歴任。東京都台東区主催「江戸まちたいとう芸楽祭」(ビートたけし名誉顧問)の委員長を務める。

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