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椎名誠の街談巷語 都知事選の政見放送は〝エンターテインメント〟だった 見る側もぐったり「暑い暑い」とブラウス脱ぎだした女性候補に驚き

zakzak by夕刊フジ / 2024年7月12日 11時0分

過去最多人が出馬した都知事選。街頭では多くの聴衆を集めた演説も(夕刊フジ)

東京都知事選挙にむけてのテレビの政見放送をけっこうマメに見てしまった。既成の政治家とは違う、つまりはまあシロウトのパフォーマンスにちょっと興味があったからだ。

馴れないスタジオに行って与えられた時間内に自分の意見を述べる、というのだからこれはタイヘンなコトと予想がつく。でも、もともとそういうコトに物おじしない人たちだから立候補したのだろう。みんな堂々としていた。まず視聴者に挨拶して、するすると本題の演説に入っていく人が多いのに驚いた。

練習を重ねてきたらしく、皆さんは思うところを話していたようだ。それぞれの「公約」も話していた。ただし、その肝心の公約自体は、あまりうまくイメージできないものが多かった。

多くの公約が非常にアッサリとしているように聞こえたからだろうか。公約がカバーする範囲が、とても狭かったり特殊だったりしたことも、物足りなさに思えたのかもしれない。話しかたや存在感が軽い、という印象がつよかった。多くの候補者が政治家的な厚顔にはほど遠かったことも関係していたような気がする。席にすわってまっすぐこっちを見てカンニングなしに喋っている人は少ないように思えた。

これまで何かいろんなことをやってきて喋り馴れているようなヒトでも、ずっと「メモを見ながら喋っている」人が多いから、テレビの向こう側にいる民衆の圧倒感というのはものすごいのだろうな、ということが伝わってきて、かえって好感を持てた人もいた。

このままでは訴求力が弱い、と思ったからなのか、ときどきメモから顔をあげてカメラを「ギロッ」と見たりする候補者もいた。その角度が悪かったのか、正面を見るときにもの凄い悪相にみえたりする。目つきがよくないのだ。それでも無理やり笑顔をまぜようとしているからなのか、言ってることと、そのヒトとのイメージの乖離(かいり)が大きくて見おわるとこっちがぐったりしてしまうケースもあった。

かと思うといきなり歌をうたいだす人がいてびっくりした。「もうどうでもいいやあ」という感じだった。そういうのもアリ、というところなのだろうか。

三十歳ぐらいの女性が「暑い暑い」といきなり芝居っぽく言いだしてブラウスを脱ぎだしたのには驚いた。自分はこのとおり可愛いんだからネットをとおしてお友達になりましょう、などと言っていた。

歌の人もこの暑がりの人も、なぜ東京都の知事を目指しているのかについては何もいわなかった。そういう単純な疑問を抱かせて、こういうそそっかしいコラムを書く人が現れるのを狙っていたのだろうか。

「NHKをぶっ壊す」と連呼している候補者が沢山続いた。それをNHKが放送しているのもなんだかおかしく、全体がエンターテインメントなのだった。

■椎名誠(しいな・まこと) 1944年東京都生まれ。作家。著書多数。最新刊は、『続 失踪願望。 さらば友よ編』(集英社)、『サヨナラどーだ!の雑魚釣り隊』(小学館)、『机の上の動物園』(産業編集センター)、『おなかがすいたハラペコだ。④月夜にはねるフライパン』(新日本出版社)。公式インターネットミュージアム「椎名誠 旅する文学館」はhttps://www.shiina-tabi-bungakukan.com

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