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列島エイリアンズ ツーリスト・トラップ編(2)日本人の〝一般的な生活を垣間見たい〟訪日客 安直「おもてなし」に辟易、望む「カジュアル・トラベラー」

zakzak by夕刊フジ / 2024年6月19日 6時30分

桜の満開の木の下で味わう酒のうまさ。外国人もこういう習慣を体験したいようだ=兵庫・夙川(夕刊フジ)

訪日外国人が日本の旅先の感想をSNSやインターネットの掲示板などに記す際、「ツーリスト・トラップ」と書き込むケースが続出している。「がっかり観光スポット」全般を指すこの言葉に込められているのは、ぼったくりや悪質サービスへの不満だけではなく、安直な「おもてなし」に対する辟易もあるようだ。

東京で、多くの訪日経験のある外国人から「ツーリスト・トラップ認定」を受けている豊洲千客万来(東京都江東区)は、その好例だ。内外装は江戸の街並みを再現しており、野外エリアに川越(埼玉県)の「鐘つき堂」を模したような櫓(やぐら)が設けられ、時折「忍者ショー」などのイベントも催されている。

数年前であれば、まさに外国人が喜びそうな演出が盛りだくさんのスポットだ。しかし、彼らのマインドが刻々と変化するなか、時代遅れ感が否めない。

そのことは日本政策投資銀行と日本交通公社がアジア・欧米豪からの訪日客を対象に実施したアンケート「訪日外国人旅行者の意向調査」(2023年度版)の結果にも顕著に表れている。

同調査の「訪日旅行で体験したいこと、体験したこと」という項目の第1位は、「自然や風景の見物」で全体の60%以上が回答。それに「桜の鑑賞」「伝統的日本料理」が続く。上位10位までをみても、8位の「世界遺産の見物」以外、日本人が日常的にやっている活動ばかりだ。

ベストテン外ではあるが、筆者が注目したのが12位の「現地の人が普段利用しているカジュアルな食事」という回答。というのも、ここ数年、ネット上の英語による旅行関連の投稿に「カジュアル・トラベラー」という言葉が散見されるからだ。

この言葉には明確な定義はないが、「現地に溶け込むように旅をする人」という意味で使われることが多い。そんな旅のスタイルは、訪日旅行者にも浸透しつつある。

「リアル&カジュアル」――。

これが今、多くの外国人の訪日観光に共通するテーマといえるだろう。

=つづく

外国人材の受け入れ拡大や訪日旅行ブームにより、急速に多国籍化が進むニッポン。外国人犯罪が増加する一方で、排外的な言説の横行など種々の摩擦も起きている。「多文化共生」は聞くも白々しく、欧米の移民国家のように「人種のるつぼ」の形成に向かう様子もない。むしろ日本の中に出自ごとの「異邦」が無数に形成され、それぞれがその境界の中で生きているイメージだ。しかしそれは日本人も同じこと。境界の向こうでは、われわれもまた異邦人(エイリアンズ)なのだ。

■奥窪優木(おくくぼ・ゆうき) 1980年、愛媛県出身。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国で現地取材。2008年に帰国後、「国家の政策や国際的事象が、末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに取材活動。16年「週刊SPA!」で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論され、健康保険法等の改正につながった。著書に「ルポ 新型コロナ詐欺」(扶桑社)など。

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