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渡邉寧久の得するエンタメ見聞録 神の啓示か…奇天烈な筋が続き、毒気に当てられるカルト映画「エストニアの聖なるカンフーマスター」

zakzak by夕刊フジ / 2024年9月30日 11時0分

かなり奇天烈である。

タイトルは「エストニアの聖なるカンフーマスター」(ライナル・サルネット監督、10月4日公開)。エストニアのアカデミー賞といわれる権威ある映画賞EFTAでは11部門にノミネートされ、作品賞など主要賞を含め9部門を制したという。

ロシアがまだソ連と呼ばれていた時代の話だ。1973年の中ソ国境。青年ラファエル(ウルセル・ティルク)は丸刈り姿の国境警備隊員として任務を遂行していた。

ある日、さっそうと現れた、男性長髪3人組のカンフーの使い手。黒の革ジャンに革のボトム、胸には大きな十字架のペンダント。空中を自由に支配し、銃撃の弾をヌンチャクで次々にたたき落とし、あっという間に制圧してしまう。

警備隊で唯一生き残ったラファエルの足元に、3人組はヌンチャクを残し去った。奇想天外な一連の出来事を神の啓示のように受け止めたラファエルは行動が変容する。

今の自分とは違う別の運命がある。ラファエルは金髪の長髪に様変わりし、家の壁に張られたブルース・リーのポスターを見ながら、ヌンチャクの自主練。ヘビメタバンド、ブラック・サバスの音楽を聞き、ノリノリで暮らす。様変わりした息子に母親があきれる。

ある日、偶然見つけた山奥の修道院。修道士たちは黒ずくめの修道服姿で、胸には大きな十字架! しかもみな、カンフーの使い手。ラファエルにとっては約束の地のような場所。弟子入りを志願する。

最初は相手にされなかったが、強い祈りでイコンに涙させた実績で老修道士が受け入れを許す。

謙虚なレッスンが始まる。レッスンといっても厳しい修業とは違い、餃子の皮を素早く投げ合ったりしながら、ブラックメタルカンフーで強くなることをを目指す。

きっと面白いのだろうなと考えつつも、反射的に笑う類いの笑いではない。奇天烈な筋が続き、毒気に当てられるという感じ。奇妙なキャラクターも登場し、コメディーっぽくもあり、コントのようでもある。カンフーと修道院とヘビメタが溶解した、いい具合に映像で遊んでいるカルトムービーだ。ドはまりできるか、追いつけないな、となるかは、見る側次第。 (演芸評論家・エンタメライター)

■渡邉寧久(わたなべ・ねいきゅう) 新聞記者、民放ウェブサイト芸能デスクを経て演芸評論家・エンタメライターに。文化庁芸術選奨、浅草芸能大賞などの選考委員を歴任。東京都台東区主催「江戸まちたいとう芸楽祭」(ビートたけし名誉顧問)の委員長を務める。

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