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お金は知っている 習近平主席の「大型財政出動」が口先だけの理由 中国で続く外貨難、共産党が支配する米ドル本位の金融システムが行き詰まり

zakzak by夕刊フジ / 2024年10月18日 6時30分

(夕刊フジ)

中国の習近平政権は底が見えない不動産バブル崩壊不況に対し、大型財政出動を今月12日に示唆したが、口先だけにとどまりそうである。

なぜか。西側のメディアや市場アナリストは首をかしげているが、理由ははっきりしている。共産党が支配する米ドル本位の金融システムの行き詰まりが原因なのだ。

グラフは中国人民銀行の保有外貨資産と人民元資金発行高(マネタリーベース)の前年同期比増減率の推移である。一目瞭然、人民銀行は外貨資産の増減に合わせて資金発行している。外貨の大半は無論、基軸通貨米ドルである。人民銀行は人民元を発行して流入する外貨を全面的に買い上げる。言い換えると、ドルがふんだんに流入すれば金融を大幅に緩和でき、流入が縮小すると引き締めることになる。

ドルの裏付けのない人民元は中国国民に信用されない恐れがある。従って共産党中央は国債発行に応じて人民元資金を創出することに極めて慎重だ。

西側の中央銀行は日銀、米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行がそうであるように、通貨を発行する場合、外貨ではなく、主として国債を市場から購入する。ところが人民銀行の場合は、これまでの20年間、総資産に占める国債など政府金融負債はわずかに4%前後にとどまっている。対照的に、人民銀行の外貨資産比率は最近で約5割である。2008年9月のリーマン・ショックの際には、人民銀行が巨額の資金発行を行い、国有商業銀行などに資金供給し、地方政府や国有企業向け融資を一挙に増やした。金融の量的拡大のもとで北京の中央政府は大型財政出動に踏み切った。この離れ業は、米FRBが大量発行したドル資金が国際金融市場経由で中国に流入したからこそ可能だった。

中国への外貨流入源は貿易など経常収支の黒字と外国からの対中投融資だが、中国は資本の流出が激しく、経常収支黒字だけでは外貨が底を突く恐れがつきまとう。特に15年から16年には金融危機が発生し、中国の投資家が資金を一斉に海外に持ち出す資本逃避ラッシュとなった。

習政権がそこで頼りにするのが、外国企業による直接投資と海外の金融機関や投資家による証券投資だが、不動産バブル崩壊とともに、2022年以降、対中投融資が激減している。習政権は資本の流出を厳重に取り締まることで、かろうじて外貨資産の減少を食い止めているが、外貨難は続いている。

中国財政省は12日に「財政支出を大幅に増加する用意がある」と表明したものの、具体的な金額については触れなかった。景気テコ入れのために必要な国債発行は日本円換算で約200兆円に上ると推定されるが、市場で消化するためには人民銀行の資金発行が欠かせない。すると、人民元の価値が失われ、一党独裁制の根底が揺らぐ。習氏はそんな悪夢に悩んでいるだろう。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

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