日本の解き方 二転三転する米エネルギー政策、トランプ路線は日本には朗報 気候変動問題は国際政治の覇権争い、対応する両にらみ戦略を
zakzak by夕刊フジ / 2024年11月15日 11時0分
ドナルド・トランプ次期米大統領は環境・エネルギー政策をジョー・バイデン現政権から一変させるとみられている。日本のエネルギー政策にどのような影響があるだろうか。
トランプ氏は、気候変動などをまったく気にしていないので、温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」も再離脱する可能性が大きい。選挙期間中も「掘って、掘って掘りまくれ」と言っていたので、米国内でシェールガスやシェールオイルを増産するだろう。その結果、世界的にエネルギー価格はかなり低下すると考えられる。
そしてトランプ政権は日本に対して増産したシェールの購入を勧めるだろう。これは日本経済にとって朗報だ。エネルギーの中東依存度を低下させ、同盟国からエネルギーを買うことで、価格低下のメリットを享受できるのだ。
トランプ氏は電気自動車(EV)の義務化を終わらせるとも言ったが、これも、一部の環境主義者を除けば日本にとって朗報だ。これまで欧州からEV化を迫られており、これが米国にも波及していたので、日本車にとって必ずしも有利でなかったが、これで一息つけるだろう。
それにしても米国のエネルギー政策は二転三転する。バラク・オバマ政権の時には脱炭素、1次トランプ政権ではひっくり返り、バイデン政権では再び脱炭素、それが2次トランプ政権でまた戻る。
筆者は、「気候変動問題は、国際政治問題」と思っている。つまり科学的な議論は別として、国際政治の中でのエネルギー覇権争いとみている。多くの人は地球温暖化が人為的な要因で起こっていると思っているが、実はそうした通念には反対意見もある。筆者は地球温暖化は事実として認めるとしても、人的要因の寄与度を示してくれれば議論できるが、学者や国際機関によって寄与度の幅があまりに異なっているので、意見を保留している。最終的には、核融合が実用化されるまで、エネルギー問題は国際政治問題であり続けるだろう。
日本はそれまでの間、右往左往しないように両にらみの対応をとるべきだ。要するに、日本は欧米からの「変化球」に対応する必要がある。その意味で、EV一本足でも、EV完全拒否も正しくなく、状況に応じた柔軟な対応が必要だ。
EVがどうなるかといえば、超長期的にみれば普及するだろう。というのは、電気は扱いやすいエネルギーなので、各種の製品で進む「電化」は自動車でも不可避だと思う。石油ストーブがエアコンに置き換わったのと同じだろう。各家庭で充電できるというのはガソリン車にないEVのメリットだ。ただし、EV化は一直線ではない。仮に世界でEV化路線が継続するとしても、日本では基本となる電力をいかに安く生産できるかを考えないといけない。
トランプ政権で米国がエネルギー供給国になって、エネルギー価格が安定化するのは日本にとって好都合だ。その中で、環境を考慮しても、小型モジュール原子炉でしのぎながら、2030年代以降の核融合時代につなげていくのがいいだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授)
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